吉祥寺東町の法政跡地問題を考える

各地で高層マンション建設を強行、地域住民との紛争多数。モラルゼロの最低マンション専業ゼネコン・長谷工コーポレーションによる、吉祥寺東町・法政高校跡地の高層マンション建設計画を追跡するブログです。

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マンションと風害~西宮市の「横長マンション」規制に想う

以前から、書き記したいと考えていたテーマの一つに「マンション風害の関係」があります。高層建築物に必ずついて回る「ビル風」問題。長谷工の説明会では、何回問い質しても「影響は敷地内に止まることから軽微」的な説明しかなされず、およそ納得のいくものではありませんでした。

そんな折り、西宮市の「横長マンション規制条例化」のニュースを見て、改めてマンション風害問題を検証してみる気になりました。そのニュースをご紹介するのは後にして、先ずは長谷工風害に関する説明を題材に、マンションによる風害の検証を行いたいと思います。ここでは参考資料として、風工学研究所による「ビル風の基礎知識」(鹿島出版会、以下「基礎知識」として引用)を使用しました。業界が明らかにしようとせず、また一般に分かりにくい風害について丁寧に解説している良書です。迷惑マンション問題に関わる方は、是非一度お読みになられることをお薦めします。

ビル風の基礎知識ビル風の基礎知識
(2005/11/23)
風工学研究所

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さて、長谷工マンションによる風害についての説明は、大要以下のようなものです(詳細は、第7回長谷工説明会に掲載した長谷工の回答書をご参照下さい)。

  1. 最高8階建て、段差のある形状なので、風害の発生はない(あっても敷地内に収まる)。
  2. しかし、風環境の変化があるから敷地内の緑化を検討する(植栽で対処する)。
  3. マンションに起因した風害による被害は補償する。


これらの諸点について、植栽についての説明が十分なされたとは言えませんし、風害による被害の補償のために、現在の風環境を測定するようにという再三の要請を無視し続けたことからも、本気で補償する気などないことは明白でしょう。そして、風害の発生はないという根拠として、自社の技術研究所によるシミュレーション結果を提示していましたが、たとえその結果が正しいものであったとしても、自社内の検証では信憑性に欠けることは否めません。そして、「基礎知識」は長谷工の説明が到底納得のいくものではないことをまざまざと示してくれています。

順を追って見ていきます。先ずは、風速増加領域が建物の形状によってどのように発生するかについて。「基礎知識」は、「建物の奥行の影響は高さや幅によるものに比べて小さい」、「一般的に風に対して見つけ面が大きいものほど風速増加領域は大きくなり、形状的には円形のようにより流線型に近づくほど風速増加領域が小さくなる傾向にある」と述べており、建物の横に長く伸びる面に対して垂直に風が当たるときに最も風害が発生することが分かります。

幅と奥行(幅と奥行による変化、クリックで拡大)

形状の変化(形状による変化、クリックで拡大)

次に、地上からの高さによる風害の影響については、「地上付近(中略)より高い部分では上空に行くにつれ風速増加の割合は小さくなる傾向にある(中略)。ただし、あくまでも増加の割合が上空ほど小さいということで、上空ではもともとの風速が大きいので、風速自体は上空ほど大きい」と述べており、突風が吹く可能性は地上付近の方が高いことを示しています。

いわゆる谷間風については、「隣棟間で両建物の相互作用で高い風速増減率が示されている(中略)。隣棟間隔は建物幅の1/2~1倍程度で最も風速が高い傾向が示される。一方、2~4倍以上隣棟間が空くと相互作用が薄まる傾向にある」との結果を示しています。

谷間風(谷間風、クリックで拡大)

また、逆流による風速増加についても検証されており、「風上側に低層建物がある場合に強くなる。この部分での風速は両建物の高さ、幅および隣棟間隔に強く影響され、風速増減率が2にも達することがある」という恐ろしいデータが示されています。

逆流(逆流の影響、クリックで拡大)

更に、風害の対策方法とその効果についても記載があり、フェンスや樹木による風速低下の効果を検証しています。樹木による防風効果を認める一方で、「防風用の樹木として落葉樹は冬期の防風効果がなくなるので注意を要する」と指摘しています。

植栽による変化(植栽の効果、クリックで拡大)

これらを踏まえて、長谷工の説明を検証してみたいと思います。先ず、風速増加領域についてですが、下図に示す通り、相応に大きな領域で風速が増加することが示されています。しかし、例えば先程の逆流や谷間風が全く見られない点に不自然さがある他、1.3倍以上が一括りにされており、最大どの程度風速が増加するのかも不明であるなど、データとして不完全な感は否めません(なお、地上近くの風に関するデータが高さ25mのときのものしかないため、出部屋が残ったりしています。基本的な検証には十分と考えますが、一応補足しておきます)。

風速増加領域(北北東)(風速増加領域図(横からの風)、クリックで拡大)

風速増加領域(南南西)(風速増加領域図(正面からの風)、クリックで拡大)

次に、風速増加もさることながら、風が澱んでしまって夏の暑さが増すことを懸念する声が挙がっていましたが、長谷工はそれを完全に否定していました。しかし、先程の「基礎知識」における建物の平面形状による風速増減率の図を見れば分かる通り、風速が低下する領域は確実に発生します。この点についても、長谷工の示すデータと説明についての疑問が残ります。

そして、植栽についてですが、説明会の場では簡単な植栽計画しか提示されませんでしたが、半分程度は落葉樹でした。落ち葉の清掃を懸念する声が上がっていたと記憶していますが、それ以上に冬場の風が強いときの防風効果に疑問が残ります。

長谷工の説明に共通するのは、「条例に定められているから一応説明はするが、それはやったという形を残すということが重要なのであって、近隣住民に計画を理解して貰うことが重要なのではない。だから、通り一遍のことを説明したら、後の詳細な点の説明は拒否する」というスタンスです。長谷工の提示したデータは正しいのかも知れませんし、対策としても相応に有効なのかも知れません。しかし、十分に理解して貰おうという気持ちがないから、理解が不十分なままで感情的な対立だけが残ってしまう。結果として損をするのは長谷工側だと思うのですが…

何れにせよ、マンションによる風害は決して軽視できるようなものではありませんし、「吉祥寺レジデンシア」のように横長の形状であればある程、風害は増加することが分かりました。この点を踏まえて、西宮市の「横長マンション規制条例」に関するニュースを見てみることにします。このニュースについては、地元・神戸新聞の「ビル風呼ぶ『横長マンション』規制 西宮市条例化へ」 に詳しく紹介されています。

 阪神・淡路大震災後のマンション開発ラッシュで人口が急増する西宮市が、「横長マンション」の規制に乗り出す。ほぼ全域で建物の高さ制限がある同市内ではここ数年、一棟の戸数を増やそうと横幅の長いマンションが目立つようになり、二百メートルを超える巨大な壁のようなものも。圧迫感に周辺住民からの苦情が多く、市は景観計画や条例化で来秋にも規制を実施する方針。マンションの横幅が対象となるのは全国で初めてという。(木村信行)
 同市内のマンションは現在、千百五十八棟。約半数の五百五十棟が震災後に建設された。一時約三十八万人にまで落ち込んだ人口も四十七万人を超え、一部の小学校では児童の増加による教室不足が深刻化している。
 特に市南部では、震災で壊滅的な被害を受けた酒蔵や企業の社宅跡などのまとまった土地にマンションが増加。最大二十-三十メートルの高さ制限があるエリアでは、横幅の長い建物が目立ち始めた。
 同市甲子園九番町のゴルフ練習場跡地にできた市内最大級のマンション(約四百五十戸)は高さ約三十メートル、幅約二百二十メートル。周辺住民からは「まるで巨大な壁のよう」「風が遮られ、両端で突風が起きる」などの苦情が出ていた。
 このため市は今年四月の中核市移行で、独自の景観計画策定が可能となったのを機に新たな規制を検討。市内を主に「住宅地」「山間地」に分け、立面の面積が住宅地で二千五百平方メートル、山間地で千五百平方メートルを超えると、棟を分割して建てるよう制限する方針を固めた。
 計画が実施されると、住宅地では高さ二十メートルの場合、現在は幅二百メートルのマンション建設が可能な敷地でも、幅百二十五メートル以下の一棟にするか、幅約八十メートルの二棟に分けるなどの必要がある。
 市の調査では現在、約五十棟がこの基準を超えているといい、市景観まちづくりグループは「まだ多くの空き地があり、これ以上横長のマンションが増えないよう手を打ちたい」としている。
(10/8 14:13)



条例の詳細な内容は分かりませんが、少なくとも高さ24m、幅127mの「吉祥寺レジデンシア」は規制の対象となり、幅を短くするか、2棟に分けるかしないといけないだろうということは分かります。このようなルールを自主的に定める西宮市と、業者の便宜ばかりを図る武蔵野市。どちらがこれからの時代に即した自治体であるかは火を見るよりも明らかでしょう。

こうした条例を制定しなければならないのは、容積率というボリュームのみを規制対象とする欠陥だらけのルールと、それを自らの権利として最大限に主張するデベロッパーのモラル欠落による相乗効果と言えるでしょう。この点について、「白浜の思いつき」というブログ(京都の白浜法律事務所のサイト内のコンテンツ)の「高さ規制による圧迫感のある町並の形成の事例」というエントリが示唆に富んでいます。ご興味のある方はご一読下さい。

遅ればせながら、かつ不十分ながらも、景観の観点から迷惑マンションを取り巻く規制は徐々に強化されつつあります。これが、これまで無秩序に緩和され続けた建築規制が、本来あるべき姿に進んでいく一里塚であることを祈ります。間違っても、自らの経営判断のミスで沈没しつつある不動産業界を救済すべく、更なる規制緩和に走るなどということがありませんように…

<5月10日追記>
シティア問題(【GW特別企画】興和不動産に売主たる資格はあるか?(その1)を参照)を調べている中で、我孫子市議会の平成17年9月第3回定例会における関口小夜子議員(日本共産党)の質問が、長谷工による風環境シミュレーションの問題点を浮き彫りにしていました。以下、ここにその部分を引用します。法政跡地での説明内容と重なる部分も非常に多く、風害についての長谷工の説明は、全くと言っていいほど質・量ともに不足しているようです。


 (前略)事業者が行ったシミュレーションの結果そのものにも、重大な疑問があります(中略)。国土交通省へ電話で問い合わせたところ、日本で5本の指に入るという風害に詳しい研究所を紹介してくれました。早速その研究所へ電話をしましたら、大変親切に教えていただき、その後シミュレーションの報告書を送付し、風害の専門家の見解を伺うことができました(中略)。
 さて、風害の専門家の見解は、風害のシミュレーションの際の最も基礎的、基本的なことで幾つかの重大な指摘をされています。
 まず1つは、シミュレーションを行う基礎データである建設地域の現在、建設前の風向、風速をアメダスのデータを採用していることです。アメダスとは、テレビの天気予報で雨の量などを示すときのデータとしてよく使われていますが、無人の地域気象観測システムで、気温、湿度、雨量などの気象状態を1時間ごとに集計しています(中略)。一般的には風の専門家はアメダスのデータは使わないとのことです。なぜかというと、一般的にアメダスは、測定の高さが低く、その地域の風の状況を代表していないことが多いからだと言われています(中略)。
 2つ目は、専門的なことになりますが、地上2メートルの風速をべき法則で推定しているが、そもそも地上2メートルあたりの風速をべき法則で推定するのが妥当ではない。よって、そうして予測した風速値は参考にならないと言われました。いわば風向、風速を予測する法則の使い方、算定方法が違うという、最も基本的部分の指摘であります。
 3つ目は、東側の住宅地は建築計画地より低く風の影響を受けにくいとあるが、計画地より低いところで、風害が出たケースは多くあり、低いことを理由に挙げるのは変であると指摘しています(中略)。
 4つ目は、第2のシミュレーションの結果の報告で、計画建物建築前と計画建物建築後の解析結果の図が示され、風速が色分けして示されていますが、その図の読み取り方がやや控え目で、数値を正確に読み取った結果とは言えないと指摘しています。
 5つ目は、総合してみて、このデータで被害が発生するほどではないとすることは、専門家として出せないということでした。


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テーマ:住宅・不動産 - ジャンル:ライフ

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