くい打ち機横転、専門学校生けが 名古屋
2008年5月28日 夕刊
28日午前8時半ごろ、名古屋市東区葵1のビル新築工事現場で、移動中のくい打ち機(高さ22メートル、重さ60トン)が横転し、現場西側の歩道(幅6メートル)をふさいだ。先端部分が、通りかかった中国人の女子専門学校生(25)の自転車の前輪部を直撃し、専門学校生は右足を打つ軽いけがをした。
東署や工事関係者によると、くい打ち機は自走式。午前8時半から作業を始め、オペレーターの男性(55)が現場内を移動させていたところ、突然バランスが崩れて倒れ、くい打ち機は現場を囲む高さ3メートルのトタン塀を押し倒して歩道をふさいだ。当時は約20人の作業員がいた。
専門学校生は日本語学校に行く途中。自転車は前輪が完全につぶれていた。歩道に駐輪中の自転車も複数台が押しつぶされたり下敷きになったりした。
当時は朝の通勤、通学時間帯で人通りが多く、一歩間違えば惨事になりかねなかった。現場近くの和菓子店の男性従業員(33)は「大きな交通事故のような音がした。けが人が1人だったのは奇跡だ」と話した。飲食店に勤める男性は「街中で人通りが多い場所での工事。こんな事故はあってはならない」と怒りの表情を浮かべた。
最後の男性のコメントは、ここ吉祥寺東町の法政跡地マンションにそのまま使いたい位、素直な周辺住民の気持ちを言い表していますね。この他、(いつまで見られるのかは分かりませんが)フジテレビやNHKのサイトでは動画も見ることができます。
以前のエントリで、クレーン車横転の危険性を指摘していましたが、杭打ち機はノーマークでした。けがをした専門学校生は「くい打ち機が直接、自転車にあたった」と話しているそうですので、ほんの少しタイミングが狂えば死亡事故になっていたところです。軽いけがで済んだのが本当に不幸中の幸いでした。因みに、この事故を起こしたのは竹中工務店です。長谷工ではありませんので、念のため。
ここで、杭打ち機の横転事故は珍しいのかと少し調べてみると、やっぱり結構起きているんですね、例によって。昨年7月の大阪市天王寺区のマンション工事現場での事故の様子は、
クレーン車横転 ... アームが車直撃、1人けが 大阪
7月26日 毎日新聞
26日午後3時20分ごろ、大阪市天王寺区空清町のマンション建設工事現場で、コンクリート柱のくい打ち作業をしていた「豊川基礎」のクレーン車 (高さ 21m、重さ 35t)=山藤登運転手 (37) =が横転し、アーム部分が工事現場わきの道路に停車中のワゴン型普通乗用車のボンネットに激突した。
車内にいた建設作業員の男性 (37) が軽傷。
府警天王寺署はクレーン車の横転を防ぐ措置をしていたかなど、業務上過失傷害容疑で捜査している。
調べでは、クレーン車はコンクリート柱のくい (長さ 13m、直径 60cm) をつり上げ、車体部分を回転させて、打ち込む場所に移動させた直後、北側に向かって倒れた。
クレーン車の山藤運転手は「作業中にバランスを崩し、倒れた」と話している。 現場では計6人が作業していたが、他にけが人はなかった。けがをした男性は車内の運転席で休憩中だった。
とのこと。なお、横転している杭打ち機の写真をこちらのasahi.comで見ることができます。
この他、少し古いですが、日経コンストラクション2002年3月22日号には、
杭打ち機が横転して民家を直撃、神奈川県の地盤改良工事で
2002/03/15
3月11日午前9時20分ごろ,神奈川県横浜市栄区長尾台町の柏尾川の河川内で,作業中の杭打ち機が転倒。リーダーの先端が対岸の民家を直撃した。この事故で,杭打ち機のオペレーターが左足に軽傷を負った。直撃を受けた民家は一部が壊れたが,住人は不在で難を逃れた。
事故が起きたのは,神奈川県横浜治水事務所が発注した地盤改良工事の現場。信友建設(本社,横浜市)が元請け会社として施工している。栄警察署や横浜西労働基準監督署の調べによると,現場では事故当時,杭打ち機のベースマシンである移動式クレーンの補助フックを使い,河川内に仮設構台を組み立てていた。
河川内に仮置きしたH形鋼を補助フックで吊り上げようとしたところ,ほかのH形鋼に引っかかった。H形鋼の運搬には別のクレーンを使い,杭打ち機はH形鋼を建て込む穴の掘削だけに使う予定だったという。
杭打ち機は,二次下請け会社の西村産業(本社,東京都墨田区)のオペレーターが操縦していた。
という事故も紹介されています。法政跡地では未だに始まらない杭打ち作業ですが、今後の長谷工の動きは十分に監視しておく必要がありそうです。
なお、上2つの事故の共通点として、杭打ち機が「自走式」だということが挙げられます。長谷工が法政跡地マンションの工事で使用しようとしているのも、「自走式」のクレーン車です。こうした自走式の重機の安全性に問題はないのでしょうか?
工事現場のクレーンと言えば、タワークレーンをよく見かけます。しかも、高層・超高層ビルの建築現場だけでなく、中層階のマンション建設現場でも、建築物の外部に仮設する(外部建て)タワークレーンを見ることが多いような気がします(と言うか、移動式クレーンを使ってマンション造っている現場をあまり見たことないような気がします。気のせいでしょうか?)。
安全性確保のためにも、長谷工にタワークレーンへ切り替えさせるというのも一法かも知れません。まあどうせ、長谷工の回答が「コスト面から難しい」なのは、聞く前から分かり切ってますけどね。幾多の実例が示す通り、安全性よりコスト削減を優先する企業体質ですから。
5月31日追記
タワークレーンなら安全なのかと思っていたら、こんな例もありました。建設業界にはびこる手抜き体質の前には、安全という言葉はどこを探しても見つからないようです。近隣住民は、一体どうやって安全を確保すれば良いのでしょうか。ひたすら我慢するしかないとすれば、やはり日本は土建体質から脱却できない後進国だということなのかも知れません。
マンション工事現場のタワークレーンが住宅を直撃
2002/02/01
1月23日午前11時40分ごろ,大阪市天王寺区大道2丁目のマンション建設工事現場でタワークレーンが転倒。市道を走行中のトラックを下敷きにしたうえ,アームが市道の反対側にある市営住宅を直撃した。クレーンの操縦席から投げ出されたオペレーターが重傷を負ったほか,市営住宅の住民2人とトラックの運転手が軽傷。
マンションは,三井建設が元請け会社として施工していた。タワークレーンの本体の高さは33mで,アームの長さは約40m。最大積載荷重は10tで,転倒直前には重さ約900kgの覆工板を搬送中だった。当日,大阪市内は強風注意報が発令中で,午前11時24分には毎秒17mという最大瞬間風速を記録した。
地下25mの深さまで打設した4本の杭で,タワークレーンを地盤に固定していた。杭は,アースオーガーで地盤を掘削し,孔内にセメントミルクを充てんしてからH形鋼を挿入して築いた。大阪中央労働基準監督署によると,4本のうち1本でH形鋼を地下22mまでしか挿入できず,他の3本に比べて3m短い状態だったという。この長さの不足した杭が地中に沈み込み,クレーンが転倒したらしい。他の3本の杭は地上付近で切断。地上に露出したH形鋼の残がいにセメントミルクが付着していなかったことから,充てん不足の可能性もあるとみて,同署は調査を進めている。
(日経コンストラクション2002年2月8日号)


