吉祥寺東町の法政跡地問題を考える

各地で高層マンション建設を強行、地域住民との紛争多数。モラルゼロの最低マンション専業ゼネコン・長谷工コーポレーションによる、吉祥寺東町・法政高校跡地の高層マンション建設計画を追跡するブログです。

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「浅草寺マンション問題」はマンション問題の縮図!

いよいよ、10月4日の武蔵野市長選挙に向けて、立候補者の告示がなされました。立候補した邑上守正・現市長と田中節男・前市議の主張・略歴については、以下の毎日jpの記事「選挙:武蔵野市長選 現職、新人一騎打ち 秋空に第一声--告示 /東京」が参考になります。

 任期満了に伴う武蔵野市長選(10月4日投開票)は27日、告示され、前市議の新人、田中節男氏(64)=自民、公明推薦=と元都市プランナーの現職、邑上守正氏(51)=民主、共産、社民、生活者ネット支持=が、いずれも無所属で立候補を届け出た。1期4年の邑上市政への評価を最大の争点に、現新一騎打ちの7日間の選挙戦に突入した。

 投票は10月4日午前7時から午後8時まで、市内23カ所で行われ、同日午後9時から市総合体育館で開票される。2日現在の有権者数は11万6172人(男5万5401人、女6万771人)。【野口由紀】

 ◇誇りある武蔵野市作る--田中氏
 田中氏は午前9時、武蔵野市西久保1の選挙事務所前で前市長の土屋正忠前衆院議員らと並んで第一声を上げた。「私は市民参加の名の下に政策決定を引き延ばしません」と邑上氏を批判。「誇りある武蔵野市を作る」と訴え、近隣自治体に比べて多い職員数を100人削減し、その財源で子育てや高齢者支援を行うことを提言した。土屋前市長は「市民参加は当たり前で、今必要なのは経営能力。それがあるのは田中候補」と援護した。

 ◇市民参加の街づくりを--邑上氏
 邑上氏は午前10時半、JR三鷹駅北口で第一声。邑上氏は「市民参加の街づくりをこれからも進めていきたい」と訴えた。鳩山新政権の発足に触れ、「地方分権を待つのではなく、自ら市民自治の街を実現し、新政権にプレゼントしたい」と述べた。午後には、菅直人副総理が衆院選後初の遊説としてJR吉祥寺駅北口を訪れ、「邑上さんに2期目の4年間をいただき、市民参加の市政をより発展させていただきたい」と支持を呼びかけた。

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 ◇武蔵野市長選立候補者(届け出順)
田中節男(たなか・せつお) 64 無新

 不動産会社役員▽市ボウリング連盟会長[歴]不動産会社員▽市議5期・議長▽明大=[自][公]

邑上守正(むらかみ・もりまさ) 51 無現(1)

 市長▽1級建築士[歴]都市計画会社員▽保育園父母会役員▽市立中PTA役員▽早大=[民][共][社][ネ]



本ブログ的にはどうしても、地区計画策定の経緯における邑上現市長のリーダーシップ欠如に辛口になってしまいますが、市政は法政跡地問題だけではないので、この4年間のそれ以外の実績等も勘案して判断したいと思っています。一方の田中前市議については、正直全くと言っていいほど存じ上げません。自身のHPやブログもないようで、日常の主義主張についてはほとんど情報がありません。市議会の会議録で発言を辿れば、どのような考え方の持ち主かはおよそ分かると思いますので、一度関心のあるテーマで会議録の検索をしてみるのが、投票する候補者を決めるためには参考になると思います。

因みに、本ブログでも法政跡地問題についての市議会の討議内容を検討しましたが、その中に田中前市議の発言がありました。ご興味をお持ちの方は、事業主の忠実なパートナー、武蔵野市をご参照下さい。

さて、武蔵野市長選挙の話題はこれ位として、本題に移ります。新聞やニュースでも紹介されていましたので、ご存じの方も多いと思いますが、浅草寺の近隣で計画されている高層マンションに関し、浅草寺と周辺住民が東京都と建築確認機関(ベターリビング)を相手取った訴訟を起こしました。その概要は、47NEWSの浅草寺が高層マンションで都提訴 「周辺環境悪化」と東京地裁にが詳しく伝えています。

 東京・浅草で着工された高さ約133メートルのマンションをめぐり、景観などの住環境が悪化するとして、浅草寺や周辺住民らが24日、東京都に対し、建築物の高さ制限や容積率などを緩和できる「総合設計許可」の取り消しを求め、東京地裁に提訴した。

 総合設計許可は建築基準法に基づき、500平方メートル以上の敷地に一定以上の空き地を持つ建築物について、市街化環境改善への見返りとして容積率や高さ制限などの緩和を認める制度。

 原告側はマンション建設自体に反対ではなく、総合設計許可の適用による高層建築の是非が争点となりそうだ。

 浅草寺は「都市開発に関する制度の乱用で、大規模建築が無計画に行われれば街のたたずまいの急激な変質を招き、寺の荘厳さも損なわれ、東京のまちづくりや観光にも悪影響を及ぼす」とのコメントを発表した。

 訴状によると、マンション建設は藤和不動産(東京)が計画し、施工はフジタ(同)。今月、浅草寺から西に数百メートルの台東区西浅草3丁目で着工した。地上37階建て、高さ約133メートルで2012年完成予定。
2009/09/24 12:50 【共同通信】



藤和不動産、フジタという金融支援によって生き長らえたゾンビ企業が、「恩を仇で返す」行為に及んでいるという構図は、吉祥寺レジデンシアの興和不動産、長谷工と全く一緒です。全てこの世から抹殺しておいた方が、世のため人のためだったと言えるでしょう。なお、このマンション計画は、当初は事業主にモリモトも名を連ねていましたが、同社の経営破綻によって藤和不動産の単独事業になったようです。

この他、日経BP社のケンプラッツは、浅草寺が都を提訴、「総合設計制度の運用に問題」(閲覧には無料の会員登録が必要)で、専門サイトらしく具体的な景観の変化を写真で示すなどして、この問題を非常に分かり易く解説しています。

その眺望のシミュレーションを見ると、そもそもマンションの手前に既に浅草ビューホテルが所在しており、既に景観は充分に破壊されているようにも見えます。しかし、この浅草ビューホテルは築23年で、既に既存不適格となっているとのこと。景観に対する議論が高まってきたのがここ数年であることを考えれば、浅草ビューホテルが既に景観を破壊していることが、このマンションが肯定される理由にはならないようです。

率直に言って、このニュースを見たとき、現在の高層マンション問題の縮図を見た思いがしました。具体的には、景観破壊総合設計制度、マンション建て替え問題と、およそマンションに絡む問題がこれでもかと集まっているのです。

先ずは、問題の発端となっているのは、総合設計制度による容積率緩和です。提訴に先立って、台東区議会に対して近隣住民が行った陳情20-36によれば、このマンション計画は総合設計制度の活用によって、容積率が500→800%と何と1.6倍にも拡大していることが分かります。単純計算なら、高さ約133mの計画は、本来は約83mにしかならなかったことになります(現実は、公開空地等で建ぺい率(100%)を半分ほどしか消化していないようなので、もっと高さは下がる筈です)。

総合設計制度が、利益のためには景観や住環境破壊などものともしない事業者たちに悪用されてきたことについては、様々なところで言及されていますので、ここでは深入りしません。しかし、1.6倍という異常な容積率緩和については、到底容認できるものではないでしょう。現に、2002年に東大大学院の大方教授他によって表明された(総合設計制度一般則化を含む)建築基準法改正案に対する反対声明では、

(前略)たとえば、ニューヨーク市でも1960年から同様な制度を導入しているが、当初の容積率割増は2割増を限度としていた。その後、1970年代からは市の財政難を背景に容積率割増対象となる整備要素や割増の限度を大幅に拡大した時期もあったが、1980年代半ばからは、容積率割増による弊害が大きく、特に主要街路に面した広場の設置はむしろ街並みの形成を妨げる場合が多いとして、この制度の乱用を制限するため、容積率割増の限度を容積率で100%というきわめて低い量に下げ、これに代えて街区内部の(つまり開発敷地外の)ポケットパークの設置などに対し容積移転を認める改正を行い今日に至っているところである。

ところが日本では、「都心居住促進」を目的として、1980年代半ばから総合設計制度による容積率割増の対象と割増量の拡大が繰り返されてきたところである。2001年現在、たとえば東京都の都心居住型総合設計制度では、十分な空地を確保しかつ延床面積の3分の2以上が住宅である開発の場合、容積率割増の限度は基準容積率の2倍まで(ただし割増分の容積率は400%を限度とする)という制度創設当初の主旨からは相当逸脱した運用が行われている。こうした拡大は、法改正によらず、政令や準則の改正によって行うことが可能であったため、安易に行われてきた面があることを否めない。

その結果、今日の東京の総合設計制度による容積率割増は、周囲の市街地の実態とも、都市計画として決定された用途地域の想定する市街地の形状とも、大きくかけ離れた高さのマンション開発等を可能にしている(後略)。



と、日本の総合設計制度の異常な運用実態を指摘しています。こんな悪制度、即刻廃止ないしは適用を厳格化すべきでしょう。

次に、マンション建て替え問題です。実は、先の陳情と同じタイミングで、対象地に以前所在していた旧藤和西浅草コープ住民たちからも陳情20-40が出されています。この中では、「当該地の北側の一部住民より、法定根拠の乏しい反対の動きによって、本計画が遅延させられることを危惧してい」る一方、「竣工の遅れは即ち仮住いにおける膨大な諸経費が圧し掛かってくるなど、様々な障害が想定される」ことを訴えています。

既に、建て替えに向けて既存建物を取り壊しており、仮住まい生活に入っておられることを考えれば、陳情にも故なしとはしませんが、この主張には著しい穴があります。それは、「マンション建て替えには容積率緩和がつきもの」だということを前提にしている点です。いや、むしろ「容積率緩和なしにはマンション建て替えはほとんど実現不可能」と言った方が良いかも知れません。

そもそも、マンションは一つの建物を実質的に入居者全員で共有しているに過ぎないにも関わらず、それを「区分所有権」というまやかしの権利によって、あたかも各々が所有しているように見せかけている代物です。そのこと自体は、普段は自由に売買できるので意識されませんが、建物の終末期にはその矛盾が一気に顕在化します(この点については、以前のエントリマンションは「終の住処」?で考察しています)。

当初の購入時から何十年も経過して、入居者の置かれている立場も大きく変化する中、建て替えの費用を捻出できない人も多く、建て替えに必要な多数決が確保できない。そのため、容積率の緩和を実現し、増床分を分譲してその利益を立て替え費用に充当することで負担を軽減する。これが、マンション建て替えに容積率緩和が絡む理由です。住民主導のマンション建て替えとして注目された原宿のコープオリンピアも、総合設計制度による容積率緩和を利用しようとしていました(このケースについては、日経ビジネスの“日本初”、住民による住民のためのマンション建て替えが詳しく伝えています)。

しかし、自らの住まいを建て替えることが、何故自己責任で実現できないのでしょうか? 戸建住宅に住まう人たちは、皆が自分の費用で建て替えているにも関わらず、です。多くの利害関係者が存在するからだと説明するのであれば、そもそもその問題を過剰なアメ(容積率緩和)でしかクリアできないようなシステムは、完全に制度として崩壊していると言わざるを得ないでしょう。

そもそも、一旦アメを与えて緩和した容積率は、その後また建て替え問題が数十年後に発生したら、また容積率緩和でクリアしようとするのでしょうか? それは、単なる問題の先送りに過ぎません。終末期を迎えるマンションが増加する今、抜本的な制度の見直し(区分所有権幻想の解体)が必要とされていると感じます。

なお、余談になりますが、先の陳情は「陳情20-36」は不採択、「陳情20-40」は採択という明暗分かれる結果となったことを、一応付言しておきます。

最後の、景観破壊問題については、最早言わずもがなでしょう。高層マンションによる景観破壊は、近年その度合いをどんどん高めています。世界遺産に限っても、原爆ドーム(広島)、平等院鳳凰堂(京都)などの後背地に高層マンションが建設され、景観が著しく破壊されたことは記憶に新しいところです。今後、景観の破壊を理由に世界遺産登録が廃止される可能性だって、ないとは言えないでしょう(海外でもそのような実例が出ています)。そのような究極の事態が惹起されるまで、我々はマンションデベロッパーによる景観破壊活動を黙認し続けるしかないのでしょうか?
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マンション業界救済は不要な政策

センスないことで定評のある吉祥寺レジデンシアの広告ですが、外観パースを基にした新たなキャッチコピーが加わったようです。それは、「吉祥寺を込めた208邸」(笑)。最早、その意味するところすら不明です。吉祥寺アドレスしか売りがないのは分かりますが、あまりに「吉祥寺」を連呼するバナナのたたき売りのような姿勢には哀れさすら漂います。

新設された看板(看板が増えました、クリックで拡大)

なお、あるニュースサイトに「吉祥寺レジデンシア」のバナー広告が出ていました。後にも先にも一度きりしか見たことがありませんので、結構貴重かも知れません。ここでも「吉祥寺」を連呼する下品な広告を、ご興味のある方はご覧下さい。

バナー広告(吉祥寺連呼の広告、クリックで再生)

吉祥寺レジデンシアについてはこれ位にして、話は止まるところを知らないマンション不況に変わりますが、それをもたらしたのはマンション業界の非常識なまでの強欲さです。規制緩和を悪用して、周囲との均整のとれない巨大マンションを次々と供給した結果、実需を大幅に超過する大量供給を全国的に展開して需要を先食い。自分たちが勝手に土地の買値をつり上げた分は、「新価格」、「新・新価格」と称して顧客に転嫁しようと目論んだ結果、顧客からそっぽを向かれて値下げの嵐。これ程までに身勝手な業界を、私は他に知りません。

このような業界は、一旦徹底的に浄化して需要と供給のバランスをとることが必要だと思いますが、何故か必ず業界と癒着した政治による救済が図られることは、以前の不況期における規制緩和の嵐が示す通りです。今回も、既に御用学者による規制緩和キャンペーンと、それを受けた容積率緩和というワンパターンな業界へのアメが配られようとしていることは、以前のエントリ「御用学者、出動。」「バラマキ追加経済対策と容積率緩和」でも触れましたが、政府およびその忠犬たる御用学者たちによるキャンペーンは止まるところを知りません。

いくつか例を挙げましょう。先ずは、第一生命経済研究所が11月12日に発表した「容積率緩和が住宅投資に及ぼす影響」というレポートから。このレポートは、サブタイトルの「20%の緩和で名目GDP1.3兆円分の潜在需要創出」が示す通り、「容積率緩和→内需拡大」というワンパターンな主張ですが、その内容は実に稚拙なものです。

内容については、「バラマキ追加経済対策と容積率緩和」でも紹介済の御用学者・八代尚宏氏による週刊東洋経済11月1日号の「容積率の引き上げで内需拡大を」参考文献に挙げていることでも分かる通り、その単なる焼き直しです。細かく引用する価値は皆無ですので、ご興味をお持ちの方はリンクを辿ってご覧下さい。

しかし、冒頭から引用する総務省による統計名を間違えており((誤)「住宅・土地基本調査」、(正)「住宅・土地統計調査」)、論文としての体をなしていません。更には、築30年以上を経過した老朽化共同住宅が「全体の7.9%もあり、安全面からもその建て替えが緊急の課題となっている」とありますが、同じ統計中の住宅の空室率は13.0%に上り、老朽化住宅を全て解体しても依然として総世帯数を上回る住宅が供給済であることは見事にスルーされています。何故、この手の輩の主張する共同住宅の終末処理は、建て替えしかないのでしょう?

確かに、老朽化した住宅に住み続けることは酷な面もありますが、だからといってアメを与えないと建て替えができないような「分譲マンション」というシステム自体に問題があることは明白です。戸建住宅は自己責任で建て替えを求められる一方で、マンションだけが特別扱いされる。これでは「共同住宅が普遍化した」とは到底言えないでしょう。普遍化した存在だと主張するなら、特別扱い自体止めるべきです。上で見た住宅の空室率を見ても分かる通り、これだけ住宅供給超過の中で、敢えて分譲マンションのような欠陥だらけのシステムに固執するのは、持家幻想の弊害とまで言ったら言い過ぎでしょうか。

話をレポートに戻すと、別の箇所では容積率と地価の関係を回帰分析で求め、高い相関関係が認められると結論付けています。このこと自体は当然の帰結ですが、決定係数は0.997と異常に高い相関関係を示しており、個別性の高い地価・賃貸料からはにわかには信じられない結果となっています。どうも「結論先にありき」的な匂いがすると思ったら、回帰分析のサンプル数が23しかなく、その抽出方法も全く示されていません。また、容積率のt値が有意水準を10%に落としているにも関わらず-1.985と(有意性を棄却される)絶対値2を下回っていることもスルーです。

こんな穴だらけのレポート、よく公表したなと思ったら、その秘密は筆者にありました。筆者として名前が挙がっている主席エコノミスト・永濱利廣氏ですが、こちらに経歴が紹介されています。それによれば、1998年より2年間、(社)日本経済研究センターに出向しています。

この日本経済研究センターですが、こちらの概要を見れば分かる通り、歴代の会長・理事長には、八代尚宏のような御用学者をはじめとして、学者・エコノミストでも官僚・政府系金融機関出身者ばかりが名を連ねています(それ以外は何故か日経出身者)。これらの人物の共通した特徴は、官費で海外留学して博士号を取得し、その後学者やエコノミストに転じていることです(御用学者共通の特徴でもあります)。このような国に大きな借りのある人物が、政府の忠犬となってさも政府の施策を学術的にも正しいかのように喧伝しているのが、多くのマスコミに登場する学者・エコノミストの姿です。

話が逸れましたが、このエコノミストとして大した実績もない永濱利廣氏が色々と重用されるのも、こうした経歴が大きくモノを言っていることは想像に難くありません。別に処世術としてそれ自体は何ら批判されるものではありませんが、およそ門外漢の問題にまで首を突っ込んで、政府のマンション業界救済策に便宜を図るのは勘弁して欲しいものです。

この他にも、11月19日付の日経新聞に掲載された「経済教室」には、八田達夫・政策研究大学院大学学長による「不況期こそ規制改革推進」と銘打たれた小泉構造改革の自己弁護が掲載されています。小泉構造改革による規制緩和事例として、「都心の容積率緩和やタクシー台数の自由化などが(中略)不況時の失業拡大を食い止めるのに決定的な役割を果たした」と自画自賛する一方、「派遣労働の自由化は、不況が生んだ失業を抑制した」と規制緩和の負の側面には目もくれません。

また、タクシー台数の自由化について、「高齢者雇用が顕著に増加し(中略)、合算すると現役世代より高い収入が得られているという話を多くの年配の運転手から筆者は聞く」と書いていますが、ここではタクシー運転手の大宗を占める現役世代は完全に無視されています。タクシー乗車の際に「最近どうですか」と聞くことは多いですが、残念ながら八田氏が紹介するような声に接したことは一度もなく、「過酷なシフトによる長時間労働」、「厳しい歩合制による収入減」、「乗車率の低下による顧客減少」といった嘆きの声ばかりです。余程、八田氏は高齢ドライバーのタクシーばかりを選んで乗車されているようです。

そして、肝心の容積率緩和ですが、「不況対策として有効なのは(中略)住宅であろう。(中略)波及効果の大きさを考えて住宅部分の規制改革を進めることも重要だ」として、「都心のマンションの基準容積率引き上げ」を提唱しています。具体例として、「東京・八重洲地区を職住接近型に再開発するケース」を検証していますが、ここではその詳細は割愛します。

しかし、高層マンション建設に伴う居住人口増加に伴う公共インフラ(学校・病院など)をどうするかは完全に無視しており、机上の空論も甚だしい内容です。急速な居住人口増加に伴う公共インフラ不足が、住民に著しい不利益を与えるかについては、豊洲地区の巨大マンション林立が既に実証済ですが、その程度のこともご存じないままに書いているのだとすれば、八田氏の良識が疑われるというものでしょう。

八田氏については、もう少し真っ当な経済学者だと思っていたのですが、残念ながら八代氏との共著が多いことでも分かる通りの御用学者に過ぎなかったようです。拡大一方の経済政策が限界に達していることは明白です。同じ景気対策であれば、低炭素社会を目指した投資や、小中学校などの耐震化推進など、後世にも生かせる投資を拡充すべきでしょう。それが結果として景気の下支えになるのであれば、無駄な公共投資や住環境を破壊し尽くす容積率緩和とは違って、意義ある投資だったと後々までも評価されることになると思うのですが…

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バラマキ追加経済対策と容積率緩和

10月30日のノエルに続き、31日にも康和地所ダイナシティマンションデベロッパーが相次いで倒産しました。お馴染みの帝国データバンクの大型倒産速報によりますと、

不動産販売、介護事業 康和地所株式会社 民事再生法の適用を申請 負債143億5300万円

 康和地所(株)(資本金5億2054万円、千代田区麹町4-8、代表夏目康広氏、従業員120名)は、10月31日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請し、同日保全命令を受けた(中略)。

 当社は、1999年(平成11年)2月に設立。「リリーベル」のブランド名でファミリーマンションの自社開発分譲を主力に、その他不動産開発・企画および仲介・販売代理を展開。外断熱工法(断熱材を外壁の外に配す手法で、冷暖房効率の向上や結露の予防が見込める工法)を使ったマンション「リリーベルサーモス」シリーズを2002年2月末に首都圏で初めて販売。高付加価値機能を取り入れたマンション開発による他社との差別化に加え、2003年10月から新たに介護事業にも参入し、東京都世田谷区内3ヵ所にて「ケアステーションすずらん」の運営ほか、2007年5月に「デイサービス梅丘」を開設するなど訪問介護、通所介護事業を展開し、2007年9月期には年売上高約135億1700万円をあげていた。

 しかし、改正建築基準法による建築確認の遅延、分譲住宅価格上昇に伴う顧客の買い控えに加え、サブプライムローン問題に端を発した金融市場の混乱など、不動産業界を取り巻く急激な変化で、2008年9月期に入り売り上げが減少、金融機関からの借り入れ負担も重く資金繰りが悪化していた。こうしたなか、10月末の決済資金が確保できず、支えきれず今回の措置となった(後略)。


マンション開発・販売 ジャスダック上場 株式会社ダイナシティ 民事再生法の適用を申請 負債520億7700万円

 (株)ダイナシティ(資本金114億9764万966円、港区虎ノ門4-3-1、代表吉田雅浩氏、従業員190名)は、10月31日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請した(中略)。

 当社は、1994年(平成6年)9月に設立。コンパクトマンションの開発・販売を主体に「ダイナシティマンションシリーズ」などの企画・開発・販売を手がけていた。開発物件は、独身・夫婦世帯などジュニアファミリー層向けに都心駅近くの物件を得意としており、2001年12月には店頭公開(現・ジャスダック)を果たし、その後も関係会社の設立や大阪支店の開設、上場投資会社との事業提携など積極的に事業を展開、2001年3月期に約169億1600万円だった年売上高は2005年3月期には約506億2600万円に達していた。

 こうしたなか、2005年6月には当時の代表取締役社長、中山諭氏が覚せい剤取締法違反により逮捕される事件が発生。同氏は社長を解任されたほか、同年8月には子会社の前代表が強制わいせつ容疑で逮捕されていたことが報道されたことで信用悪化を招いていた。同年12月にはライブドアグループと資本・業務提携したものの、翌2006年1月には(株)ライブドアが東京地検特捜部と証券取引等監視委員会から証券取引法違反容疑で家宅捜査を受ける事態となっていた。同年6月にはライブドアグループが所有する当社株式を(株)インボイス(東京都)に譲渡されることが決議され、同社グループの傘下に入り再建を図っていた。

 この間、本業面においては2006年3月期に年売上高約604億7500万円を計上するなど堅調な推移をみせていたが、得意としていたコンパクトマンション市場への大手マンションデベロッパーの参入や同業界を取り巻く環境の悪化から2008年3月期の年売上高は約315億6000万円にダウン、損益面はソリューション事業(物件のバリューアップ)において保有している物件および収益性が低いプロジェクト物件の評価見直しなどで多額の特別損失を計上したことで約92億2100万円の当期損失を余儀なくされていた。今期に入り、不動産市況が大幅に悪化したことで保有物件の売却も進まず、資金調達も急速に厳しくなったことで今回の措置となった(後略)。



前代表が覚醒剤所持で逮捕されたような非常識なワンルームマンション業者の倒産などどうでもいいですが、外断熱マンションにこだわりを持って事業展開していた康和地所の倒産は残念な気もします。知名度、割高感などで仕方ない面もあるのでしょうが、すくなくとも安普請の大型マンションを造り続けて平然としている某社がのさばる業界に、良いものを造れば消費者は評価してくれるという変化を起こしてくれればと期待していたのですが。あれ程高額の物件の中身が、依然としてきちんと評価されていないことが、マンション業界のモラルのなさを助長している気がしてなりません。

さて、そんな深刻なマンション不況が続く中、30日に政府の追加経済対策が発表されました。その中身は首相官邸のHP内に紹介されています(概要1(2ページ)概要2(11ページ)概要2の詳細版(25ページ))し、報道でも再三解説されていましたので、いちいち詳しく言及しませんが、バラマキ型だとの批判が強いことはご承知の通りです。

最大2兆円の生活支援定額給付金(仮称)という「史上最大の愚策」として定評のある地域振興券の失敗から何も学んでいなかったとしか思えない愚策や、ETCに限定した高速道路1000円乗り放題(大都市圏除く)という需要喚起の衣を被ったETC普及策など、突っ込みどころも満載ですが、本ブログ的には無関係なので割愛します(なお、同時に3年後の消費税率引き上げを明言するなど、追加経済対策の名を借りた各省庁の要望実現を感じさせる点が多い点に、麻生政権の底の浅さが見え隠れしていますね)。ここでは、「住宅投資・防災強化対策」という施策の中心である住宅ローン減税と、そこにどさくさ紛れに盛り込まれた容積率の緩和について採り上げたいと思います。

先ずは、住宅ローン減税について。減税の規模を過去最高水準に引き上げるという方針がマンション需要を刺激するという声がありますが、非常に眉唾ものです。先ず、そもそも減税で需要を喚起できるということは、相応の需要があるということが前提ですが、現在のマンション販売低迷は過去の大量供給によって需要を先食いしてしまった部分が相当に大きいと見るのが妥当でしょう。そのようなニーズ自体が減少している中で、一体何の需要を喚起すると言うのか? 単に、たまたま今購入する人が漁夫の利を得るだけではないのか? そんな疑問を感じて仕方ありません。

唯一救いがあるとすれば、減税の中身として「環境・高齢化問題等のための省エネ・バリアフリー等の住宅リフォーム減税の検討」が謳われていることでしょうか。最早、「建て続けることで景気を高揚する」という高度成長期の経済施策が時代遅れであることは明白です。こちらに減税の主眼が置かれるようなことになれば、日本も成熟した社会へと変貌を遂げたのだと実感できるのですが… 報道を見る限りは難しそうです。

そして、今回の本題とも言えるどさくさ紛れに盛り込まれた「容積率の緩和」についてです。景気対策としての容積率緩和の荒唐無稽さは、以前のエントリ「御用学者、出動。」でも見た通りですが、そこでも紹介した御用学者・八代尚宏氏は、週刊東洋経済11月1日号の「経済を見る眼」という記事でも、「容積率の引き上げで内需拡大を」という業界の陳情そのまんまな主張を性懲りもなく繰り返しています。

そのワンパターンな内容を詳しく紹介することは時間の無駄なので止めますが、「規制改革の効果が表れるまでには長い時間がかかるという『常識』があるが、その例外が容積率規制の改革である」、「納税者の負担で整備された公共性の高い都市空間では、地権者の財産権についても一定の制約を設けることが必要になる」、「建物の前面道路の幅員規制の見直しも合わせて行うことで、現状の容積率自体が、たとえば東京都区部では半分強しか活用されていない状況を改善できる」、「もし未利用容積率がない場合でも、住民の安全性が確保できるならば、特例として容積率を割り増すことが建て替えに有効な手段となる」といった部分を引用しただけでも、「これって不動産業界の陳情書?」と思わざるを得ない内容です。

容積率緩和が、時によって景気低迷対策、地価高騰対策と全く正反対の場面で主張されてきたことは無視して、根拠のない容積率の緩和の経済対策としての有用性を説くところや、高層建築物の被害を受ける側の財産権の制約だけを一方的に主張するところ、はたまたマンションの終末処理は建て替えしか頭にない点など、流石は業界の利益の代弁者たる御用学者の面目躍如たるところです。このようなエセ経済学者をいつまでものさばらせておくのは、はっきり言って日本の恥ですね。

話が追加経済対策から逸れてしまいました。一般の報道の中では、追加経済対策の中身としてこの「容積率の緩和」に触れたものはほとんど見られません。首相官邸のプレスリリースの中でも、「住宅ローン減税や容積率の緩和などを通じて住宅投資等を促進するとともに、省エネ、子育て等に資する住宅の普及を支援する」として、具体的施策の中に「容積率の緩和(高度な環境対策を行う建築物、優良な都市開発プロジェクト等)」と簡単に書かれているに過ぎません。

しかし、過去の総合経済対策や緊急経済対策に盛り込まれた容積率の緩和や、地下室の容積不算入が、都市景観にどのような問題を引き起こしたかを考えれば、この施策が如何に国民生活に多大なる負荷を与えるものかは一目瞭然でしょう。それを更に緩和しようとする。熱心な規制緩和論者である森ビルをはじめとする一部都市型不動産業者や、長谷工のような脱法巨大マンション群を建てまくる環境破壊型事業者だけに多大なるメリットのある容積率の緩和を、更に推し進めようとすることが本当に必要なのでしょうか。先程の住宅ローン減税の箇所でも指摘した、住宅の質的向上を図る方向にシフトすることが、環境への負荷を軽減するサステイナビリティに配慮した対策だと思うのですが。

このような観点の指摘を行っている、さくら事務所・長嶋修会長の「今こそ内需拡大を、住宅政策を」をご紹介して、本日のエントリを終わります。世界的に低成長時代に突入していることが顕著な今、これまで以上に税金の使い道には目を光らせる必要があることを今一度真剣に銘々が考え、このような火事場泥棒的な規制緩和に断固反対する必要があるのではないでしょうか。

「量の追求」より「質の追求」へ

 テレビのとある政治討論番組で中川財務相が、「建物の耐震」「容積率の緩和」について触れていた。

 「建物の耐震」を推進するのはとてもいいことだ。現在、オフィスビルや学校はもちろん、既存住宅の耐震診断、耐震補強はほとんど進んでいない。「お金がかかるから」がその主な理由だ。一般的な住宅について耐震補強を施せば、平均的に120万円以上かかる。これに対する補助をいくつかの自治体が行っているが、補助額はせいぜい50万円が上限で、あまりにも低すぎるため、耐震診断・耐震補強はなかなか進んでいない。補助金の増額や、固定資産税の減免、ローン金利補助などについて、思い切った策を講じたい。住宅の安全性も高まり、災害対策としても非常に有効であり、必要のない道路を造るよりはよほどマシだ。

 一方、「容積率の緩和」は、主に都心部・都市部のオフィスをイメージした政策と見られるが、これは、ほかから需要を吸い取る「ストロー現象」を生み出すため、今度はそれに対処しなければならならない。効果は限定的だし、政策としてはやや苦しい。局地的な地価上昇を生み出し、需要を吸い取られた地域との格差を拡大させてしまう。

 もし新築需要を生み出したいなら「容積率緩和」のような「量の追求」より、先述した「耐震性」や断熱などの「省エネ性」、修繕や更新のしやすさとしての「メンテナンス性」など、「質の追求」に向かったほうがいいだろう。これはオフィスだけなく、住宅についても言えることだ。将来に建物という確実な資産を残すことにつながるし、省エネルギーな国づくりができる(後略)。

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御用学者、出動。

前回のエントリの最後で、「間違っても、自らの経営判断のミスで沈没しつつある不動産業界を救済すべく、更なる規制緩和に走るなどということがありませんように…」と、景気悪化に便乗した生活環境・景観の悪化を伴う規制緩和に対する懸念を示しましたが、早速にも御用学者がそのような動きを開始したようです。

17日の日経新聞朝刊の「金融危機 インタビュー」に、政府の経済財政諮問会議の民間議員を務める八代尚宏・国際基督教大教授が登場していました。インタビューの中で、ここで問題にしたい箇所は以下の通りです。

――政府・与党は追加の経済対策をつくる。
「先にまとめた総合経済対策にある定額減税の規模が固まっていない。さらに何を積み増すのか。公共工事を積極的にやり始めたら、簡単にはやめられない。即効性のある事業には無駄なものが多い。小手先の対策ではなく、長期的な視点で需要を生む対策をすべきだ」
「例えば住宅の容積率を緩和してはどうか。緩和を宣言するだけでも、マンション建設への動きが出る。そもそも昨夏に建築基準法を改正した時に政府の準備不足があって、建設不況につながった。老朽マンションの建て替えにもつながる施策であり、緊急事態の今こそ提案すべきだ」



この部分だけを読んでも、いかにこの八代氏が現実の経済活動に疎いかが分かります。昨今のマンション不況は、そもそも造り過ぎによる過剰在庫が問題なのに(それが証拠に大幅に売り出されるマンションが減少しても在庫は増加する一方)、更に容積率を緩和してマンションを造れと言う。建設不況を建築基準法改正のせいにしている点にしても、その本質は需要を見誤ったことによる過剰在庫にある(つまり、業界の自己責任)にも関わらず、建築基準法改正(=官製不況)に責任を転嫁する。業者への利便を図る以外に、何ら確たる主張はない、典型的な「御用学者」の姿がここにはあります(なお、誤解のないように申し添えますが、建築基準法改正による建築確認の遅れがマンション不況を加速させた面は確かにあります。但し、これは確認の遅れによって売り出しが販売が低調になった時期に重なってしまったというだけで、問題の本質が過剰なマンション供給にあることには変わりありません)。

そもそも、この不況対策としての容積率の緩和という考え方自体、何ら目新しいものではありませんし、その根拠も非常に怪しいものです。以前のエントリ「長谷工と不愉快な仲間たち」でもご紹介した「『都市再生を問う』ー建築無制限時代の到来ー」という本には、いかにこの容積率の緩和がいい加減な理由付けでなされてきたかが喝破されています。

理論矛盾の都市政策(P.20)
 当時(1986年)は、安藤(太郎住友不動産会長)氏がいっていたように、地価が高騰しているのは、土地の供給が少ないからで、旧国鉄用地などをふくめ公有地も放出し、容積率をあげれば供給が増えて土地が安くなるという議論が財界ばかりでなくマスコミや学者の間で横行していた。中曽根内閣の都市政策「アーバン・ルネッサンス」はその政治的表現であった。
 しかし、橋本龍太郎内閣で、このような「土地の理論」は再び180度転換した。橋本政権は1997年2月10日の閣議で「新総合土地政策推進要綱」を決定し、土地政策の重点をバブル時代から続いていた地価抑制策から「土地の有効利用」に転換したのである。小泉内閣の都市再生本部はその流れの上にある。
 橋本政権の具体的な政策の中身は、旧国鉄用地の再開発などの「優良事業」の容積率を割増しするなど、低・未利用地を有効活用するほか、密集地の再整備の促進や、定期借地権制度の普及などだった。
 バブル時代は地価が高騰しているから公有地を放出し容積率を上げろの大合唱だったが、こんどは地価がバブル崩壊以後は急落しているから公有地を放出し容積率を上げろということになったのである。ここに「土地の理論」のいいかげんさが端的に証明されている(後略)。

「都市再生」を問う―建築無制限時代の到来「都市再生」を問う―建築無制限時代の到来
(2003/04)
五十嵐 敬喜、小川 明雄 他

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もうそろそろ、住宅政策を景気対策としてだけ語るのは止めにして欲しいものです。この調子では、福田内閣のときに提言された「200年住宅ビジョン」辺りにかこつけて、「良質な住宅ストックの供給」のために「更なる容積率の緩和が必要」だとでも言い出しかねません。既に世帯数を大幅に超過している住宅戸数の現状を考えれば、そんな政策が不要であることは明白でしょう。そもそも、ステレオタイプに唱えられる「住宅投資は裾野が広く、経済波及効果が大きい」という主張も眉唾物です。90年代に散々住宅減税を拡充しても景気高揚が実現できなかったこと、昨今のマンションバブル崩壊の実体経済への影響がほとんど見られなかったことからも、この点は既に裏付けられていると思いますが。まあ、関係業界の方々は決して認めないと思いますけど。因みに、建築家の隈研吾氏はその著書「負ける建築」の中で、このように語っています。

 (前略)同様にして、スケールに対する精緻な計算も20世紀建築を破綻させていった。先述のように建築の大きさがケインズ政策の拠り所である。大きくてヴィジブルなものを中心にして、政治も経済もドライブされていくというヴィジョンであった。その大きさゆえに乗数効果が生まれ、景気の浮揚も可能となったのである。しかし、今や経済全体のスケールも、また速度も、ケインズの時代とは比較にならないほど増大した。各国経済を区画していた障壁は消え失せ、グローバリゼーションという名の世界経済の接合が、経済というもののスケール感覚を変質させてしまった。建築は相対的にきわめて小さい存在となった。このちっぽけなものを用いて、経済全体を浮揚させる乗数効果など、とても期待できないのである(後略)。(P.15)

負ける建築負ける建築
(2004/03)
隈 研吾

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一連のサブプライム問題に端を発した米国発の金融危機が、日本経済に及ぼしている影響の大きさを考えれば、この指摘は正に正鵠を得ていると言えるのではないでしょうか。また、隈氏は養老孟司氏との対談「『ともだおれ』思想が日本を救う」(閲覧には会員登録が必要)の中で、次のように語っています。

―― 集合住宅を1軒1軒分譲するという発想がことのほか強いのは、日本ならではですか。

隈 分譲比率は日本が圧倒的に高いと思う。

養老 でも会社の立場でいったら、ビルを買うことはあってもフロアを買うことってないよね、考えてみると。

隈 分譲マンションは普通だけど、分譲オフィスってないですね。

養老 ビルそのものは公共的なものなのに、その公共的な場所の一部分を私有したい、というへんな感覚が育っているんだよ。

隈 年月が立つとその辺りの矛盾が大問題になっていくんです。マンションって、建て替えがしにくいでしょう。建て替えられない場合は最終的にはスクラップかスラム化しかないのですが、分譲されるときには、あたかも一生の安心を買ったような気になってしまう。20世紀の最初に住宅ローンで幸せな一生を約束するという上手なウソをアメリカが発明したわけで、そのアメリカ製の幻想が、日本で一番うまく効いちゃったわけですね。

養老 買うときは、コンクリートだからいいだろう、とね。

隈 むしろコンクリートだからこそ、実は建て替えも簡単にできない。頑丈だということが、逆にマイナスの方に振れていくわけですが、買うときはそれに気付かない。

養老 杉の植林と同じだよね。植えるときは5年で大きくなるのはいいじゃないか、ということでしょう。でも50年後に花粉でみんなが苦しむというのを全然、分からなかったわけだよね。

隈 基本的に都市の中というのは、賃貸という形で家族形態の変化とか、ライフスタイルの変化とかに応じて、フラフラと移動しながら住むようにできているんです。都市環境では、経済状況だってしょっちゅう変わるし、それにつられていろいろなことが変わっていくから。都市の中のエリアでも流行りすたりがありますし。

養老 それはそうだよね。

隈 都市という生き物は、住宅を分譲して資産だよ、と言った途端に、大きな病を抱え込むことになります。

養老 流動性がなくなることだからね。都市という生命体の代謝が悪くなる。

隈 日本人は景観としても、ディテイルとしても、豊かな住文化を持っていたのに、どうしてそれをぶち壊しにするようなマンションを乱造しちゃったのか、と外国人は言います。日本ファンの人ほど失望していて、オフィスビルなんかはまだ見られるけど、日本のマンションは一番見られないと彼らは言うわけです。

 それは、資産として売るためにはどうしたらいいかという、分譲のマーケティングを徹底した末の光景ですね。

養老 あれをみんな求めているんですかね。

隈 あの景観に満足している人はいませんが、実際に買う人はたくさんいるわけです。ですから売る技術だけは、ものすごく進歩しちゃったんです。

 似たマンションが建ち並ぶ場所では、ほかよりもこういうふうによく見せるとか、駅から遠い立地だったら、別の便利さをくっつけるとか、そうやって、できるだけ高く売る技術。その技術はいまだに有効だから、買う人がいるんです。日本人は、そういう、いったん固定された課題の中での競争となると、異常に頑張っちゃう。

養老 分譲という手法は、高度成長期に大型のニュータウンをつくるときに、金融のシステムと一緒につくっちゃったシステムだよね。

隈 確かにそのシステムが経済成長期には、内需拡大のドライブになったんです。高度成長というのはインフレ容認型の経済ですから。消費者化する日本人に向けて、純粋な金融資産だけではお金は増やせないよ、土地を持っていないとお金が目減りするよ、という幻想を与えたんですね。

養老 金本位制ではなく、土地本位制だね。

隈 おまけに現実には賃貸でろくな住宅が見つからない。それなら賃貸よりも買った方が、資産志向も満たされるし、好きな環境にも住める。そのように幻想が補強されたんですね。企業にとってみればそれは思うツボで、賃貸よりも分譲の方がすぐにお金を回収できる。分譲で投資が処理できたらこんな楽なことはない。

養老 なんとも手離れのいいビジネスだねえ。

(「アメリカ製の幻想が、日本で一番うまく効いちゃった」より)



見事なまでに、マンションデベロッパーが必死に醸成しようとしている共同幻想を喝破しており、痛快ですらあります。

話を御用学者・八代氏に戻します。八代氏は、「ホワイトカラー・エグゼンプション」問題(いわゆる「残業代ゼロ法案」)で一躍名を馳せたことをご記憶の方も多いと思います(この問題に対する八代氏の主張はこちらを参照)。その主張は、正しい部分もあるのですが、そもそも現実の企業における労働の実情との乖離が著しく、机上の空論の域を出ておらず、それが激しい批判の元になっているという点を理解されていないようです。このような主張が、経済界の意向を酌んだ政府の筋書きに利用され、結果として御用学者と揶揄されることになっている訳です。

しかし、八代氏はほぼ一貫してこのような強硬論を唱えており、その点では政府におもねて主張を変えるという典型的な御用学者ではなさそうです。むしろ、全てのモノやサービスを「財」に置き換えて議論する経済学にあまりにも忠実であり過ぎた結果として、「労働」というサービスには「労働者」という生きた人間がいることや、「住宅」というモノには「人の生活環境」という基本的人権に関わる問題が内包されていることが全く理解できないのでしょう。その意味において、所詮は書生論に過ぎない空疎な主張です。

同様の傾向は、以前のエントリ「迷惑マンションの圧迫感についての一考察」でもご紹介した福井秀夫・政策研究大学院大学教授にも共通しています。恐ろしいのは、このような現実の痛みを理解できない主張を繰り広げる御用学者たちが、政府の各種諮問会議の委員となって、経済界の便宜を最大限に図っていること、そしてそのことが及ぼす悪影響に全く気付いていない(ないし気付かない振りをしている)ことです。彼ら、御用学者の動向には十分に注意が必要です。彼らの机上の空論が、政府にうまく利用されて経済界の自分勝手な要望を実現していくことになるのですから。

個人的には、無駄な規制をなくしていくという意味での規制緩和には大いに賛成です(例えば、日本よりも規制の厳しい国で認可されている薬品や食品添加物の認可取得に、多大なる労力とコストが掛かる点など)。しかし、規制緩和によって小さな政府を目指すにしても、国民生活の観点から緩和してはいけない規制も存在する点を忘れてはならないでしょう。既に、一定の豊かさを手に入れている日本が目指すべき生活の質的向上という観点から、景観の問題などはその最たる物だと考えますが、皆さんはどうお感じになりますか?

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マンションと風害~西宮市の「横長マンション」規制に想う

以前から、書き記したいと考えていたテーマの一つに「マンション風害の関係」があります。高層建築物に必ずついて回る「ビル風」問題。長谷工の説明会では、何回問い質しても「影響は敷地内に止まることから軽微」的な説明しかなされず、およそ納得のいくものではありませんでした。

そんな折り、西宮市の「横長マンション規制条例化」のニュースを見て、改めてマンション風害問題を検証してみる気になりました。そのニュースをご紹介するのは後にして、先ずは長谷工風害に関する説明を題材に、マンションによる風害の検証を行いたいと思います。ここでは参考資料として、風工学研究所による「ビル風の基礎知識」(鹿島出版会、以下「基礎知識」として引用)を使用しました。業界が明らかにしようとせず、また一般に分かりにくい風害について丁寧に解説している良書です。迷惑マンション問題に関わる方は、是非一度お読みになられることをお薦めします。

ビル風の基礎知識ビル風の基礎知識
(2005/11/23)
風工学研究所

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さて、長谷工マンションによる風害についての説明は、大要以下のようなものです(詳細は、第7回長谷工説明会に掲載した長谷工の回答書をご参照下さい)。

  1. 最高8階建て、段差のある形状なので、風害の発生はない(あっても敷地内に収まる)。
  2. しかし、風環境の変化があるから敷地内の緑化を検討する(植栽で対処する)。
  3. マンションに起因した風害による被害は補償する。


これらの諸点について、植栽についての説明が十分なされたとは言えませんし、風害による被害の補償のために、現在の風環境を測定するようにという再三の要請を無視し続けたことからも、本気で補償する気などないことは明白でしょう。そして、風害の発生はないという根拠として、自社の技術研究所によるシミュレーション結果を提示していましたが、たとえその結果が正しいものであったとしても、自社内の検証では信憑性に欠けることは否めません。そして、「基礎知識」は長谷工の説明が到底納得のいくものではないことをまざまざと示してくれています。

順を追って見ていきます。先ずは、風速増加領域が建物の形状によってどのように発生するかについて。「基礎知識」は、「建物の奥行の影響は高さや幅によるものに比べて小さい」、「一般的に風に対して見つけ面が大きいものほど風速増加領域は大きくなり、形状的には円形のようにより流線型に近づくほど風速増加領域が小さくなる傾向にある」と述べており、建物の横に長く伸びる面に対して垂直に風が当たるときに最も風害が発生することが分かります。

幅と奥行(幅と奥行による変化、クリックで拡大)

形状の変化(形状による変化、クリックで拡大)

次に、地上からの高さによる風害の影響については、「地上付近(中略)より高い部分では上空に行くにつれ風速増加の割合は小さくなる傾向にある(中略)。ただし、あくまでも増加の割合が上空ほど小さいということで、上空ではもともとの風速が大きいので、風速自体は上空ほど大きい」と述べており、突風が吹く可能性は地上付近の方が高いことを示しています。

いわゆる谷間風については、「隣棟間で両建物の相互作用で高い風速増減率が示されている(中略)。隣棟間隔は建物幅の1/2~1倍程度で最も風速が高い傾向が示される。一方、2~4倍以上隣棟間が空くと相互作用が薄まる傾向にある」との結果を示しています。

谷間風(谷間風、クリックで拡大)

また、逆流による風速増加についても検証されており、「風上側に低層建物がある場合に強くなる。この部分での風速は両建物の高さ、幅および隣棟間隔に強く影響され、風速増減率が2にも達することがある」という恐ろしいデータが示されています。

逆流(逆流の影響、クリックで拡大)

更に、風害の対策方法とその効果についても記載があり、フェンスや樹木による風速低下の効果を検証しています。樹木による防風効果を認める一方で、「防風用の樹木として落葉樹は冬期の防風効果がなくなるので注意を要する」と指摘しています。

植栽による変化(植栽の効果、クリックで拡大)

これらを踏まえて、長谷工の説明を検証してみたいと思います。先ず、風速増加領域についてですが、下図に示す通り、相応に大きな領域で風速が増加することが示されています。しかし、例えば先程の逆流や谷間風が全く見られない点に不自然さがある他、1.3倍以上が一括りにされており、最大どの程度風速が増加するのかも不明であるなど、データとして不完全な感は否めません(なお、地上近くの風に関するデータが高さ25mのときのものしかないため、出部屋が残ったりしています。基本的な検証には十分と考えますが、一応補足しておきます)。

風速増加領域(北北東)(風速増加領域図(横からの風)、クリックで拡大)

風速増加領域(南南西)(風速増加領域図(正面からの風)、クリックで拡大)

次に、風速増加もさることながら、風が澱んでしまって夏の暑さが増すことを懸念する声が挙がっていましたが、長谷工はそれを完全に否定していました。しかし、先程の「基礎知識」における建物の平面形状による風速増減率の図を見れば分かる通り、風速が低下する領域は確実に発生します。この点についても、長谷工の示すデータと説明についての疑問が残ります。

そして、植栽についてですが、説明会の場では簡単な植栽計画しか提示されませんでしたが、半分程度は落葉樹でした。落ち葉の清掃を懸念する声が上がっていたと記憶していますが、それ以上に冬場の風が強いときの防風効果に疑問が残ります。

長谷工の説明に共通するのは、「条例に定められているから一応説明はするが、それはやったという形を残すということが重要なのであって、近隣住民に計画を理解して貰うことが重要なのではない。だから、通り一遍のことを説明したら、後の詳細な点の説明は拒否する」というスタンスです。長谷工の提示したデータは正しいのかも知れませんし、対策としても相応に有効なのかも知れません。しかし、十分に理解して貰おうという気持ちがないから、理解が不十分なままで感情的な対立だけが残ってしまう。結果として損をするのは長谷工側だと思うのですが…

何れにせよ、マンションによる風害は決して軽視できるようなものではありませんし、「吉祥寺レジデンシア」のように横長の形状であればある程、風害は増加することが分かりました。この点を踏まえて、西宮市の「横長マンション規制条例」に関するニュースを見てみることにします。このニュースについては、地元・神戸新聞の「ビル風呼ぶ『横長マンション』規制 西宮市条例化へ」 に詳しく紹介されています。

 阪神・淡路大震災後のマンション開発ラッシュで人口が急増する西宮市が、「横長マンション」の規制に乗り出す。ほぼ全域で建物の高さ制限がある同市内ではここ数年、一棟の戸数を増やそうと横幅の長いマンションが目立つようになり、二百メートルを超える巨大な壁のようなものも。圧迫感に周辺住民からの苦情が多く、市は景観計画や条例化で来秋にも規制を実施する方針。マンションの横幅が対象となるのは全国で初めてという。(木村信行)
 同市内のマンションは現在、千百五十八棟。約半数の五百五十棟が震災後に建設された。一時約三十八万人にまで落ち込んだ人口も四十七万人を超え、一部の小学校では児童の増加による教室不足が深刻化している。
 特に市南部では、震災で壊滅的な被害を受けた酒蔵や企業の社宅跡などのまとまった土地にマンションが増加。最大二十-三十メートルの高さ制限があるエリアでは、横幅の長い建物が目立ち始めた。
 同市甲子園九番町のゴルフ練習場跡地にできた市内最大級のマンション(約四百五十戸)は高さ約三十メートル、幅約二百二十メートル。周辺住民からは「まるで巨大な壁のよう」「風が遮られ、両端で突風が起きる」などの苦情が出ていた。
 このため市は今年四月の中核市移行で、独自の景観計画策定が可能となったのを機に新たな規制を検討。市内を主に「住宅地」「山間地」に分け、立面の面積が住宅地で二千五百平方メートル、山間地で千五百平方メートルを超えると、棟を分割して建てるよう制限する方針を固めた。
 計画が実施されると、住宅地では高さ二十メートルの場合、現在は幅二百メートルのマンション建設が可能な敷地でも、幅百二十五メートル以下の一棟にするか、幅約八十メートルの二棟に分けるなどの必要がある。
 市の調査では現在、約五十棟がこの基準を超えているといい、市景観まちづくりグループは「まだ多くの空き地があり、これ以上横長のマンションが増えないよう手を打ちたい」としている。
(10/8 14:13)



条例の詳細な内容は分かりませんが、少なくとも高さ24m、幅127mの「吉祥寺レジデンシア」は規制の対象となり、幅を短くするか、2棟に分けるかしないといけないだろうということは分かります。このようなルールを自主的に定める西宮市と、業者の便宜ばかりを図る武蔵野市。どちらがこれからの時代に即した自治体であるかは火を見るよりも明らかでしょう。

こうした条例を制定しなければならないのは、容積率というボリュームのみを規制対象とする欠陥だらけのルールと、それを自らの権利として最大限に主張するデベロッパーのモラル欠落による相乗効果と言えるでしょう。この点について、「白浜の思いつき」というブログ(京都の白浜法律事務所のサイト内のコンテンツ)の「高さ規制による圧迫感のある町並の形成の事例」というエントリが示唆に富んでいます。ご興味のある方はご一読下さい。

遅ればせながら、かつ不十分ながらも、景観の観点から迷惑マンションを取り巻く規制は徐々に強化されつつあります。これが、これまで無秩序に緩和され続けた建築規制が、本来あるべき姿に進んでいく一里塚であることを祈ります。間違っても、自らの経営判断のミスで沈没しつつある不動産業界を救済すべく、更なる規制緩和に走るなどということがありませんように…

<5月10日追記>
シティア問題(【GW特別企画】興和不動産に売主たる資格はあるか?(その1)を参照)を調べている中で、我孫子市議会の平成17年9月第3回定例会における関口小夜子議員(日本共産党)の質問が、長谷工による風環境シミュレーションの問題点を浮き彫りにしていました。以下、ここにその部分を引用します。法政跡地での説明内容と重なる部分も非常に多く、風害についての長谷工の説明は、全くと言っていいほど質・量ともに不足しているようです。


 (前略)事業者が行ったシミュレーションの結果そのものにも、重大な疑問があります(中略)。国土交通省へ電話で問い合わせたところ、日本で5本の指に入るという風害に詳しい研究所を紹介してくれました。早速その研究所へ電話をしましたら、大変親切に教えていただき、その後シミュレーションの報告書を送付し、風害の専門家の見解を伺うことができました(中略)。
 さて、風害の専門家の見解は、風害のシミュレーションの際の最も基礎的、基本的なことで幾つかの重大な指摘をされています。
 まず1つは、シミュレーションを行う基礎データである建設地域の現在、建設前の風向、風速をアメダスのデータを採用していることです。アメダスとは、テレビの天気予報で雨の量などを示すときのデータとしてよく使われていますが、無人の地域気象観測システムで、気温、湿度、雨量などの気象状態を1時間ごとに集計しています(中略)。一般的には風の専門家はアメダスのデータは使わないとのことです。なぜかというと、一般的にアメダスは、測定の高さが低く、その地域の風の状況を代表していないことが多いからだと言われています(中略)。
 2つ目は、専門的なことになりますが、地上2メートルの風速をべき法則で推定しているが、そもそも地上2メートルあたりの風速をべき法則で推定するのが妥当ではない。よって、そうして予測した風速値は参考にならないと言われました。いわば風向、風速を予測する法則の使い方、算定方法が違うという、最も基本的部分の指摘であります。
 3つ目は、東側の住宅地は建築計画地より低く風の影響を受けにくいとあるが、計画地より低いところで、風害が出たケースは多くあり、低いことを理由に挙げるのは変であると指摘しています(中略)。
 4つ目は、第2のシミュレーションの結果の報告で、計画建物建築前と計画建物建築後の解析結果の図が示され、風速が色分けして示されていますが、その図の読み取り方がやや控え目で、数値を正確に読み取った結果とは言えないと指摘しています。
 5つ目は、総合してみて、このデータで被害が発生するほどではないとすることは、専門家として出せないということでした。


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コンクリート偽装問題から見えるもの

耐震偽装以降、建設業界に対する信頼は地に墜ちたままですが、それにとどめを刺すような問題が勃発しました。今度の問題は、神奈川県藤沢市の六会コンクリートが、生コンにJIS規格で認められていない溶融スラグを混ぜた製品を出荷していたというもので、問題の生コンを納入した物件が同県内に196物件あり、昨年12月から今年3月にかけ納入した8物件(マンション7件、工場1件)でポップアウト現象(コンクリートの表面部分が、コンクリート内部の膨張圧により部分的に飛び出し、剥がれてくる現象)が生じている、とのことです。

溶解スラグ自体は、ごみなど廃棄物の焼却灰を溶かして固化させた粒状のリサイクル資材で、側溝やアスファルトなどに骨材としての使用はJIS規格で認められています。しかし、生コンや柱などの主要構造部分に用いるのは建築基準法違反です。1立方メートル当たりの原価は、砂に比べて100円ほど安いそうで、同社の小金井社長は記者会見で「砂など素材の高騰に苦しんでいたため、JIS規格違反であることを知りながら違反を続けていた」と発言しています。

もちろん、この六会コンクリートの行為は断じて許されるものではありませんし、原料高騰に苦しむ中でも安定した製品出荷をしている他の業者からすれば、迷惑千万でしょう。しかし、こうした不心得な事業者が現れる背景には、建設業界が抱える本質的な問題が見え隠れしているように思われてなりません。

それは、一言で言えば「過剰なまでのコストカット要求」です。耐震偽装問題にしても、その本質は「過剰なコスト削減要求に対して、鉄筋を削減しても耐震基準を充足しているかのように構造計算書を偽装した」ことにありました。今回の問題も、その本質は何ら耐震偽装問題と変わるところはなく、問題は(チェックが難しいという点において)更に根深いように思えます。

重層的な請負体質により、末端に行けば行くほど過剰なコストカット要求に苦しめられる業界体質が、今回の問題の引き金となっているのではないでしょうか。そして、そのような重層的請負体質の頂点に君臨するのが、いわゆる「ゼネコン」です。ゼネコンはGeneral Contractorの略で「総合請負業」のことです。間違っても「Constructor(建設業者)」ではありません。ゼネコン自体には、施工能力・ノウハウなど全くなく、あくまでも施工能力・ノウハウは彼らが言うところの「協力業者」が持っているものです。これが、よく言われる「ゼネコン不要論」の根拠であり、日本の建築の高コスト体質の根源です。本来、きちんと原材料に行き渡るべき建築費が、途中のこのような不要な業者にピンハネされている。それが一連の建築偽装問題の本質でしょう。いくら上っ面の法改正をしたところで、ゼネコン問題を放置したままでは実効性は限りなく薄いと考えます。

話を六会コンクリート問題に戻します。現時点で、六会コンクリート生コンを使用していることが判明しているマンションは、以下の通りです。

グランドメゾン東戸塚(売主:積水ハウス)、 施工:長谷工コーポレーション
ブリリアアーブリオ戸塚(売主:東京建物・東電不動産)、施工: 淺沼組
サンクタス戸塚(売主:オリックス)、 施工:大洋建設
レーベンハイム鎌倉マナーハウス(売主:タカラレーベン)、施工:熊谷組
プラウド藤沢イースト・ウェスト(売主:野村不動産)、 施工:淺沼組
パークホームズ大船(売主:三井不動産)、 施工:三井住友建設
ヴェレーナ湘南海岸(売主:日本綜合地所)、 施工:長谷工コーポレーション
グレーシアステイツいずみ野(売主:相鉄不動産)、 施工:五洋建設
グレーシアパーク藤沢善行(売主:相鉄不動産)、長谷工コーポレーション
レクセル藤沢(売主:扶桑レクセル)、施工:東海興業
ヴェレーナ戸塚(売主:日本綜合地所)、 施工:長谷工コーポレーション



一瞥していただければお分かりの通り、施工業者にはある特徴があります。それはもちろん、11物件中4物件と長谷工が突出した存在感を示していることに他なりません。この場合、デベロッパーはどこから生コンを仕入れているかなど知る由もありませんから純粋な被害者と言えるかも知れませんが、ゼネコンはそうはいかないでしょう。

この問題に対して、ゼネコンは建材商社経由で生コンを仕入れており、建材商社が生コン協会と話し合って仕入れ先が決まるという護送船団まがいの共同販売形態が未だに採られているため、ゼネコンも被害者であるとゼネコンを擁護する声が聞かれます。しかし、その程度の管理能力しかなくて、一体何のための「総合請負」なのでしょうか? ゼネコンは、自らが手掛ける製品の原材料の品質すら、全く管理できないということなのでしょうか?

更に、上記の物件リストには、いわゆるスーパーゼネコンは一社も登場してこないことはどう説明するのでしょうか? 単なる偶然、または今後名前が挙がってくるのかも知れませんが、過剰なデベロッパー側の施工請負価格の引き下げ圧力に屈した二流ゼネコンが、少しでも安い資材を使用した結果が、一連の偽装問題ではないかと考える方が、現段階では自然ではないでしょうか。

とすれば、長谷工の責任は更に重いでしょう。何故なら、長谷工の請負価格は直床、二重壁の安普請仕様にも関わらず、他社より低いどころか、むしろスーパーゼネコン並に高いのですから。その理由が土地情報持ち込みによる「特命受注」にあることは再三本ブログでも言及してきましたが、それだけの工事代金を貰っておきながら、使用する資材は二級品とは… 自らの利益以外には何ら関心はなく、住まいを造るという発想は皆無であることがはっきりと出ています。

ゼネコンは、大規模物件用に日本に数社しかいらないでしょう。そして、二流ゼネコンは淘汰されるべきで、どこが真っ先に淘汰されるべきか、この生コン偽装問題がはっきりと指し示している気がしてなりません。

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杭打ち機よ、お前もか。

既に夜のニュースなどでも報道されていましたのでご存じの方も多いかと思いますが、今日の午後2時頃、名古屋市東区の工事現場で杭(くい)打ち機が横転する事故がありました。事件のあらましは以下の通りです(中日新聞の夕刊より)。

くい打ち機横転、専門学校生けが 名古屋

2008年5月28日 夕刊

 28日午前8時半ごろ、名古屋市東区葵1のビル新築工事現場で、移動中のくい打ち機(高さ22メートル、重さ60トン)が横転し、現場西側の歩道(幅6メートル)をふさいだ。先端部分が、通りかかった中国人の女子専門学校生(25)の自転車の前輪部を直撃し、専門学校生は右足を打つ軽いけがをした。
 東署や工事関係者によると、くい打ち機は自走式。午前8時半から作業を始め、オペレーターの男性(55)が現場内を移動させていたところ、突然バランスが崩れて倒れ、くい打ち機は現場を囲む高さ3メートルのトタン塀を押し倒して歩道をふさいだ。当時は約20人の作業員がいた。
 専門学校生は日本語学校に行く途中。自転車は前輪が完全につぶれていた。歩道に駐輪中の自転車も複数台が押しつぶされたり下敷きになったりした。
 当時は朝の通勤、通学時間帯で人通りが多く、一歩間違えば惨事になりかねなかった。現場近くの和菓子店の男性従業員(33)は「大きな交通事故のような音がした。けが人が1人だったのは奇跡だ」と話した。飲食店に勤める男性は「街中で人通りが多い場所での工事。こんな事故はあってはならない」と怒りの表情を浮かべた。



最後の男性のコメントは、ここ吉祥寺東町の法政跡地マンションにそのまま使いたい位、素直な周辺住民の気持ちを言い表していますね。この他、(いつまで見られるのかは分かりませんが)フジテレビNHKのサイトでは動画も見ることができます。

以前のエントリで、クレーン横転の危険性を指摘していましたが、杭打ち機はノーマークでした。けがをした専門学校生は「くい打ち機が直接、自転車にあたった」と話しているそうですので、ほんの少しタイミングが狂えば死亡事故になっていたところです。軽いけがで済んだのが本当に不幸中の幸いでした。因みに、この事故を起こしたのは竹中工務店です。長谷工ではありませんので、念のため。

ここで、杭打ち機横転事故は珍しいのかと少し調べてみると、やっぱり結構起きているんですね、例によって。昨年7月の大阪市天王寺区のマンション工事現場での事故の様子は、

クレーン横転 ... アームが車直撃、1人けが 大阪

7月26日 毎日新聞

 26日午後3時20分ごろ、大阪市天王寺区空清町のマンション建設工事現場で、コンクリート柱のくい打ち作業をしていた「豊川基礎」のクレーン車 (高さ 21m、重さ 35t)=山藤登運転手 (37) =が横転し、アーム部分が工事現場わきの道路に停車中のワゴン型普通乗用車のボンネットに激突した。
 車内にいた建設作業員の男性 (37) が軽傷。
 府警天王寺署はクレーン車の横転を防ぐ措置をしていたかなど、業務上過失傷害容疑で捜査している。
 調べでは、クレーン車はコンクリート柱のくい (長さ 13m、直径 60cm) をつり上げ、車体部分を回転させて、打ち込む場所に移動させた直後、北側に向かって倒れた。
 クレーン車の山藤運転手は「作業中にバランスを崩し、倒れた」と話している。 現場では計6人が作業していたが、他にけが人はなかった。けがをした男性は車内の運転席で休憩中だった。



とのこと。なお、横転している杭打ち機の写真をこちらのasahi.comで見ることができます。

この他、少し古いですが、日経コンストラクション2002年3月22日号には、

杭打ち機が横転して民家を直撃、神奈川県の地盤改良工事で

2002/03/15
 
 3月11日午前9時20分ごろ,神奈川県横浜市栄区長尾台町の柏尾川の河川内で,作業中の杭打ち機が転倒。リーダーの先端が対岸の民家を直撃した。この事故で,杭打ち機のオペレーターが左足に軽傷を負った。直撃を受けた民家は一部が壊れたが,住人は不在で難を逃れた。
 事故が起きたのは,神奈川県横浜治水事務所が発注した地盤改良工事の現場。信友建設(本社,横浜市)が元請け会社として施工している。栄警察署や横浜西労働基準監督署の調べによると,現場では事故当時,杭打ち機のベースマシンである移動式クレーンの補助フックを使い,河川内に仮設構台を組み立てていた。
 河川内に仮置きしたH形鋼を補助フックで吊り上げようとしたところ,ほかのH形鋼に引っかかった。H形鋼の運搬には別のクレーンを使い,杭打ち機はH形鋼を建て込む穴の掘削だけに使う予定だったという。
 杭打ち機は,二次下請け会社の西村産業(本社,東京都墨田区)のオペレーターが操縦していた。



という事故も紹介されています。法政跡地では未だに始まらない杭打ち作業ですが、今後の長谷工の動きは十分に監視しておく必要がありそうです。

なお、上2つの事故の共通点として、杭打ち機が「自走式」だということが挙げられます。長谷工法政跡地マンションの工事で使用しようとしているのも、「自走式」のクレーン車です。こうした自走式の重機の安全性に問題はないのでしょうか?

工事現場のクレーンと言えば、タワークレーンをよく見かけます。しかも、高層・超高層ビルの建築現場だけでなく、中層階のマンション建設現場でも、建築物の外部に仮設する(外部建て)タワークレーンを見ることが多いような気がします(と言うか、移動式クレーンを使ってマンション造っている現場をあまり見たことないような気がします。気のせいでしょうか?)。

安全性確保のためにも、長谷工にタワークレーンへ切り替えさせるというのも一法かも知れません。まあどうせ、長谷工の回答が「コスト面から難しい」なのは、聞く前から分かり切ってますけどね。幾多の実例が示す通り、安全性よりコスト削減を優先する企業体質ですから。

5月31日追記
タワークレーンなら安全なのかと思っていたら、こんな例もありました。建設業界にはびこる手抜き体質の前には、安全という言葉はどこを探しても見つからないようです。近隣住民は、一体どうやって安全を確保すれば良いのでしょうか。ひたすら我慢するしかないとすれば、やはり日本は土建体質から脱却できない後進国だということなのかも知れません。

マンション工事現場のタワークレーンが住宅を直撃

2002/02/01

 1月23日午前11時40分ごろ,大阪市天王寺区大道2丁目のマンション建設工事現場でタワークレーンが転倒。市道を走行中のトラックを下敷きにしたうえ,アームが市道の反対側にある市営住宅を直撃した。クレーンの操縦席から投げ出されたオペレーターが重傷を負ったほか,市営住宅の住民2人とトラックの運転手が軽傷。
 マンションは,三井建設が元請け会社として施工していた。タワークレーンの本体の高さは33mで,アームの長さは約40m。最大積載荷重は10tで,転倒直前には重さ約900kgの覆工板を搬送中だった。当日,大阪市内は強風注意報が発令中で,午前11時24分には毎秒17mという最大瞬間風速を記録した。
 地下25mの深さまで打設した4本の杭で,タワークレーンを地盤に固定していた。杭は,アースオーガーで地盤を掘削し,孔内にセメントミルクを充てんしてからH形鋼を挿入して築いた。大阪中央労働基準監督署によると,4本のうち1本でH形鋼を地下22mまでしか挿入できず,他の3本に比べて3m短い状態だったという。この長さの不足した杭が地中に沈み込み,クレーンが転倒したらしい。他の3本の杭は地上付近で切断。地上に露出したH形鋼の残がいにセメントミルクが付着していなかったことから,充てん不足の可能性もあるとみて,同署は調査を進めている。

(日経コンストラクション2002年2月8日号)

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用途地域の抜本的見直しを!

今日の話題は、法政跡地問題とは直接の関係はありません。しかし、私がマンション問題の本質と考えていることを、別の切り口からあぶり出している記事を、今朝(5/14)付の日経朝刊に見つけましたので、そのことについて考えてみたいと思います。

ご紹介する記事は、住宅接近、工場街悩む・騒音に苦情、移転なら雇用維持できずというもので、NIKKEI NET上でも記事の最初の方だけ紹介されています。

 東京や大阪の中小製造業が隣接する住宅やマンション住民との共存に悩んでいる。工場街は交通の利便性から空き地が住宅として活用されているが、引っ越してきた住民にとっては工場の騒音などが悩みの種。中小企業の方もトラブルを避けるため、設備増強などが進められない。中小は住民との対話の場を作ったり、繁忙期の作業場の提供を地方の企業に求めたりと、住民との共存に知恵を絞っている。
 大阪府大東市では昨年7月、地元企業と住民の代表双方が参加し住宅と工場の「調和」を目指す協議会を発足した。市内の工場集積地の工場跡地に大型マンションや住宅の建設が相次ぎ、騒音トラブルなどが顕在化し始めたためだ。地元社員の雇用を維持するため、工場移転は難しい。



Web上の記事紹介は、この出だし部分のみで終わっています。しかし、本当に重要なのは紙面でこれに続いている次の1センテンスです。

 工場集積地は都市計画法用途地域で「工業地域」や「準工業地域」に指定されるが、住宅建設は制限されない。そのため工場移転などで広大な敷地が空くと、住宅開発会社が取得し大型物件を開発する流れがここ数年続いている。モデルルームがにぎわう週末は機械が止まるため、音などの実態を知らずに購入するケースもあるという。



以下は具体的な事例の紹介が続きますが、それは本ブログの関心とは無関係なので割愛します。ここまで引用すれば、もう何を言おうとしているかは明白でしょう。被害者が地域住民か中小工場主かの違いはあれど、マンションデベロッパーの「自分さえ良ければそれで良し」という身勝手な姿勢の代償を、地域に先住するものが支払わなければならないという理不尽さが、そこには存在しています。

そして、このような理不尽さの根源となっている制度こそ、都市計画法に基づく「用途地域」だと考えます。用途地域の本来の目的は、地域特性を考慮して土地の利用方法を定め、用途の混在を防ぐことにある筈です。しかし、実情は現状を追認して制定されているため、周辺が全て戸建中心の住宅街であっても、既に大手メーカーの工場があれば工業系の用途地域に指定されたり、大学があれば大学用地だけ用途地域が緩和されたり(大学は最も規制が厳しい第一種低層住居専用地域には建設できない)しています。

現に、ここ法政跡地にしても、吉祥寺東町はほぼ全域が一種低層地域であるにも関わらず、武蔵野美大があるために武蔵野美大・法政跡地・市立第三中学校を含むエリアのみ、第一種中高層専用住居地域に緩和されています(それが証拠に、元・法政一中高と同程度の校舎が建っている吉祥女子中高は(建ぺい率・容積率は緩和されているものの)一種低層地域です)。

吉祥寺東町の都市計画図
(駅周辺を除き、ほぼ全域が一種低層。中央黄緑部分が法政跡地、右端の斜線部分が吉祥女子。クリックで拡大)

その結果、工場や大学が移転した跡地を心ないマンションデベロッパーが購入し、用途地域が緩和されている経緯など完全に無視して、「用途地域上建築可能であり、何ら違法性はない」と称しては、周囲に大変な迷惑を及ぼす巨大マンションを建築しているのが、ほとんどのマンション建設紛争の本質だと思います。そして、そのような紛争を最も多く、且つ大規模に起こしている企業こそ、長谷工なのです。

先の中小工場街の問題も本質は全く一緒です。本来工場密集地である地域特性を無視してマンション建設を強行し、しかもその地域特性に起因する騒音問題等は顧客に説明しないままに販売。結果として、本来売り主であるマンションデベロッパーが負うべき責任を、先住者である工場主たちが負わなければならない。この理不尽さは、どこかで歯止めを掛けなければ、マンションデベロッパー各社のモラルに任せていても決して解決しないことは、既にここ数年の乱開発の歴史が雄弁に物語っています。

お願いの看板
(こんな看板見つけました、クリックで拡大)

このような無法状態を早急に解消するため、都市計画法を改正し、用途地域に一定の制限を課すことが必要でしょう。とは言え、一方的に用途地域の規制を厳しくすることは、既に居住している人の権利を侵害することになりますので、なかなか難しいと思います。

そこで、地域特性から判断して、明らかに特定の施設のためだけに用途地域が緩和されているエリアについては、当該施設が存続する間だけ当該用途地域を適用し、その施設が移転等した場合には、その時点で周囲と同様の用途地域に変更するという、いわば用途地域版「(大相撲の)一代年寄株」とでも言う制度を創設して欲しいと思います。

勿論、土地利用を制限することは既得権者の反発も強く、一朝一夕ではなしえないとは思います。しかし、これ以上の乱開発を抑制するために、そして(法政のように)本来の(用途地域緩和)経緯をわきまえずに「金儲けをして何が悪い」と言い放って、土地をモラルなきマンションデベロッパーに売り払って去っていくような「逃げ得」を許さないためにも、是非このような歯止めが必要だと考えます。

ともかく、実態にそぐわない用途地域規制が、マンションデベロッパー各社の脱法行為を助長していることは動かしがたい事実です。何とかこの現実を変えていくために、できることを少しでもやっていきたいと思う今日この頃です。

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住宅密集地でのクレーン車使用の是非

法政跡地のうち、記念講堂の解体工事が本格化してきました。それに伴って、また振動と騒音の日々がやって来てしまいました。本当にご勘弁を願いたいものです。下の写真は連休中に撮影したもので、記念講堂の土手っ腹に穴が空いています。今では前面の壁が全て取り壊されており、見る影もありません。

穴あき記念講堂
(クリックで拡大)

個人的には、この記念講堂の解体については、非常に理不尽さを感じています。武蔵野市議・川名ゆうじ氏のブログの2005年12月27日付エントリ「買い取れるか? 法政中・高校跡地」に、記念講堂内部の写真が掲載されています。川名氏自身も、記事中で「講堂を見ましたが、築20年とまだまだ使えるように思えました。公共施設となるとエレベーターがないので、改造費が必要でしょうが、このまま壊すにはもったいないと思いました。見た目ですが、吉祥寺駅南口にある武蔵野公会堂よりも良いように思えたからです」と述懐しておられますが、全く同感です。あれだけの建物ですから、公共的な施設として十分有効利用できた気がしてなりません。この辺り、地下に貯水槽を造るという目的ありきの用地取得であって、市民の声が本当に反映されているとは言い難いものを感じてしまいます。

話はガラッと変わりますが、ゴールデンウィーク後半は、6日未明の強風や8日深夜の地震など、色々と自然の力を再認識させられました。そして、その都度、今後必ず懸念事項として持ち上がるであろう「あること」を想起せずにはいられませんでした。その「あること」こそ、今後の新築工事に伴って設置されるクレーン車による転倒・落下などの災害発生の危険性です。

以前のエントリ「長谷工施工現場は危険がいっぱい」で、長谷工クレーン転倒事故の常習犯であることはご紹介済ですが、これは何も長谷工だけが特別な存在という訳ではなく、建設業界全体に蔓延する問題のようです。常陸機工というクレーン専門工事業者のHP内に、移動式クレーン事故情報としてクレーンによる事故情報が時系列的に紹介されています。これを見ると、その数の多さ自体にも呆れますが、転倒・落下などの重大事故も頻発しており、いかに業者が口先で「安全」を唱えようと、事例がその危険性を雄弁に物語っています。個別の業者名は開示されていませんが、当然、長谷工事例も含まれています。時間があれば、それぞれの事故を起こした会社がどこなのか、調べてみるのも面白いかも知れません。

また、国際サービスシステムという建設機械販売会社のHP内にある「メンテナンスニュース」というコンテンツには、VOL.46 クレーンの転倒事故の話VOL.68 クレーンの転倒事故の話(2)と「禁断のテーマ」を二度も採り上げています。それだけ、業界内から見ても転倒事故が多いということでしょう。紹介されている事例の事故原因は「過負荷防止装置を解除しての使用」、「アウトリガーを張り出す地盤の養生(不足)」、「リミットスイッチの調整不良」という何れも業者の危険性に対する認識が欠けているとしか思えないものです。これが業界全体を取り巻くモラルの低さだとしたら… 考えたくもありませんね。

次に、南流山鰭ケ崎・・死人坂のマンション物語というサイト(紛争を7年も継続しているという努力には頭が下がります)内の「死人坂資料室」には、クレーン車横転事故の模様を伝える(写真付の)新聞記事が2件保存されています(船橋市東中山1丁目柏市あけぼの4丁目)。特に、船橋の事例にある「左後輪が約3センチの段差にひっかかり、バランスを崩して」倒れたという記載には驚かされました。その程度で横転するようなものを住宅密集地で平気で使用する神経って… 3センチの段差など、ごく日常的に生じうるものです。住宅密集地でのクレーン車使用には、もっともっと厳しい安全規制が必要なのではないでしょうか。

最後に、ちょっとユニークなクレーン横転事故の様子を紹介したブログ「マンション屋さんの溜め息」から建設中の事故をご紹介します。横転したクレーンがマンションのセールスポイントにしていたシンボルツリーに倒れかかり、右半分がきれいさっぱり削られてしまった様子を紹介しています。ここまで来ると、苦笑せざるを得ませんね。

繰り返しますが、街中でのクレーン使用にはもっともっと厳しい規制が必要なのではないでしょうか? これだけ豊富な事例を目の当たりにすると、建築業界の自浄作用に期待することは、限りなく無理という気がしてなりません。何でも規制という考え方は、時代に逆行している面もありますが、無秩序なマンションデベロッパーの乱開発から住環境を保全することや、こうした人命に関わることについては、規制の強化が検討されるべきと思います。

新築工事の説明会を行っていた際には、「4月から着工、連休前には販売開始の予定。なので、これ以上の協議には応じられない」と繰り返し嘯いていたにも関わらず、本格的な工事は未だ始まらず、販売が開始される気配すら見られません。再三指摘している通り、最早マンションは建てるだけ売れ残りを増やすだけです。これらが、長谷工の撤退に向けての動きなら嬉しいのですが、どうせそんな理性は持ち合わせていないでしょうから、取り敢えず建ててしまって、売れ残りは値引いて売り切るといういつものパターンに陥るのが関の山でしょう。

吉祥寺計画
(取り敢えず看板は設置されてます、クリックで拡大)

本ブログで紹介済の物件だけを採ってみても、竣工後も未だに販売している物件ばかりです。既に、長谷工得意の大規模マンションは飽和状態です。加えて、ここ法政跡地のマンションは、敷地の制限から長谷工得意の(共用部分の容積不算入を悪用した)豪華共用施設を造ることもできないでしょうから、高級物件に縁のない長谷工では一体どんな物件を用意してくるのでしょうか? 売れ残りに向けたお手並み拝見といきましょう。

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2008年はマンション業界崩壊の年?

2007年も残すところあとわずかとなりました。長谷工のモラル欠落振りと武蔵野市政の身勝手さに振り回された年も、もうすぐ終わりです。来年こそは、こうした心配のない明るい年にしたいものです(このままでは、新築工事だ何だととても無理そうなのが残念ですが…)。

法政跡地の解体工事ですが、いよいよC校舎(西側北棟)もほぼ解体されてしまい、女子大通り側からは今までになく視界が開けた状態になりました。これがそのまま低層の町並みに置き換われば言うことはないのですが、巨大な下駄箱のような長谷工マンションが建てられるまでの一時的な開放感というのが非常に残念です。

法政跡地(交差点側)
(クリックで拡大)

法政跡地内側
(クリックで拡大)

それにしても、西側といい、今度の北側といい、防音壁をさっさと撤去しての解体工事は一体何なんでしょう? C校舎は法政通りにも女子大通りにも非常に近いので、両者の交差点周辺の住民の方にすれば、騒音は相当なものと思われます。少しでも騒音被害を軽減するつもりがあるなら、こんなに早い防音壁撤去はあり得ないと思うのですが…

先日、また長谷工より次回説明会の案内状が投函されていましたが、そのタイトルがこれまでの「説明会開催のご案内」から「協議会開催のご案内」に一方的に変わっていました。元々、説明会は市の紛争予防条例に基づいて行われていたものであり、現在まで住民側が要望している事項に対して満足がいく説明は行われていません。その中で、一方的に「プライバシー等に関する協議」を行うと称して「説明会」を「協議会」に変更するというのは、「近隣住民に対するこれ以上の説明は一切行わず、計画は一方的に進める。プライバシー対策に係る工事等についてだけ、個別の住民との協議には応じてやる」という宣戦布告でしょうか。紛争予防条例に基づく斡旋・調停への移行も含めて、また一悶着ありそうな気配です。

さて、本日が今年最後のエントリになると思いますので、最近、大量在庫を抱えて自壊へ向かうマンション業界についてのニュース増加の動きをご紹介して、来年のマンション業界崩壊を祈念したいと思います。マンション業界の方々にとっては、今が自省して計画を縮小する最後のチャンスですよ。

先ずは、週刊東洋経済12月22日号の「中堅業者が破綻 ブーム終焉のマンション市況」から。この記事は、雑誌に掲載されたのと同じ内容が、上記リンクから読めます。是非ご一読下さい。事件自体は、横浜の中堅業者・グレイスが実質倒産したというもので、まあ良くある話と言えばその通りです。にも関わらず、わざわざ記事にされているのは、この倒産劇が「販売価格の高騰による需要の冷え込み」を背景として「マンション市況の減速感が際立つようになった」ことや、「かつてない長期のブームが、主力購買層である団塊ジュニアの需要を先食いした可能性が高い」ことなど、単なる一業者の個別要因ではなく「マンション販売は長きにわたる空前のブームが終焉。業界は淘汰のとば口に立っている」との見方が強いことによるものでしょう。それでも、立ち止まって自省することができないのが、マンション業界のマンション業界たる所以なのですが…。

また、少し前ですが12月14日付の日経産業新聞の「マンション価格 戸建てに接近」という記事では、「マンションデベロッパー各社が郊外で演じた用地取得合戦」でコスト増となり、「結果的に一戸建ての価格水準に並んでしま」い「一戸建ての供給量の多い郊外では、マンションは苦境に立たされ」ていると分析されています。更に、「冷え込む市況にゼネコンが見切りを付ける動きも出始め」、「マンション市場から離脱しようと準備に入ったゼネコンもある」ことが紹介されています。因みに、この記事の最後は「1994年から続いたマンションブーム。その終焉は今、確実に近づいている。マンションデベロッパーを始め、その恩恵に浴してきた関連企業も今、着実に試練に立たされようとしている」と結ばれています。奇しくも、二つの記事には「終焉」というキーワードが共通して登場しています。宴はもう終わりました。今一度、現実を見つめ直すことが業界関係者には必要だとの警鐘が鳴らされているようです。

最後は、「“新築で1000万円引き”も夢じゃない! 高騰するマンションの『在庫一掃セール』始まる」という刺激的な見出しの記事のご紹介で終わりたいと思います。

記事自体は、「新築マンションが売れていない」こと、その原因が「購入者の所得が上昇していない」中で「用地価格や資材価格の高騰をもろに販売価格に転嫁したことによる失敗」にあることを指摘。結果として、「積みあがった在庫の『一掃セール』が、2007年度の期末に向けて始まるだろう」と予測しています。煽動的なタイトルの割には、至極もっともな内容の記事です。

しかし、この在庫の積み上がりは着実に進行しています。実名は出せませんが、既に販売不振で約3分の1を賃貸に切り替えて無理矢理完売を装った中堅マンションデベロッパーのケースや、某商社が某マンション専業ゼネコン(あれ?)施工物件の完成在庫を一括して再販業者に大幅に割り引いてしまったケースなど、悲惨な話がそこかしこにごろごろしています。このような状況下でも、大量にマンション用地を買い漁ったツケとして、来年以降も次々とマンションが竣工していく。そして、原価は上昇する一方で、販売価格には転嫁できず。結論は、言うまでもないでしょう。

来年こそ、地域環境を無視するマンション事業者達にとって”不”幸多い年でありますように。

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